高齢者消除

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法律

高齢者消除と相続:戸籍消除の落とし穴

近ごろ、世の中全体で高齢の方が増えているのに伴い、どこにいるか分からなくなってしまった高齢の方の戸籍をどう扱うかという問題が表面化しています。こうした状況を受けて作られたのが「高齢者消除」というしくみです。これは、100歳を超えた高齢の方で、なおかつ一定の期間、所在が確認できない場合、亡くなったという確証が得られなくても戸籍から消すことができるというものです。一見すると、役所の仕事が簡単になり、使い勝手が良いように思えますが、このしくみには、遺産相続にまつわる落とし穴があるのです。この「高齢者消除」という制度、目的は戸籍の正確さを保つことと、行政事務を円滑に進めることにあります。100歳を超え、長期間所在不明の高齢者の場合、すでに亡くなっている可能性が高いと考えられます。そこで、死亡の確認がとれなくても戸籍を消除することで、戸籍の現状と現実とのずれを少なくし、行政の効率化を図ろうというわけです。しかし、この制度を利用する場合、相続手続きには注意が必要です。通常、相続手続きは死亡診断書や死体検案書を基に行いますが、高齢者消除の場合、これらの書類がないまま手続きを進めることになります。そのため、相続人が誰なのか、あるいは相続する財産が何なのかをはっきりさせることがより重要になります。もし、相続関係が複雑な場合や、多額の財産がある場合には、専門家、例えば司法書士や弁護士などに相談し、慎重に進めるべきでしょう。さらに、高齢者消除後に、実はご本人が生存していたことが判明した場合、戸籍は復活します。そうなると、一度行った相続手続きをやり直さなければならない可能性も出てきます。このような事態を避けるためにも、家族間でしっかりと話し合い、状況を共有しておくことが大切です。この制度は、確かに行政の効率化には貢献しますが、相続という観点からは、慎重な対応が必要となるのです。