過剰防衛

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法律

過剰防衛:正当防衛との境界線

身の安全や財産を守るために、やむを得ず誰かを傷つけてしまう、そんな状況を考えてみてください。法律では、このような場合「正当防衛」という考え方があり、一定の条件を満たせば、罪に問われないことがあります。正当防衛とは、自分や他人の生命、体、自由、財産といった権利が不当に脅かされた時に、それに対抗するため、やむを得ず危害を加える行為が違法とはされないことです。正当防衛が認められるためには、まず、差し迫った不正な攻撃がなければなりません。過去に受けた攻撃や、これから起こるかもしれない攻撃に対して、先手を打って反撃することは正当防衛にはあたりません。攻撃はまさに今、起こっているものでなければならないのです。例えば、暴漢に襲われそうになったその瞬間に行う反撃は、正当防衛になり得ますが、後日、仕返しに暴漢を襲うのは正当防衛にはなりません。次に、反撃はその攻撃を防ぐためのものでなければなりません。また、その反撃は必要最小限の範囲で行われなければなりません。他に身を守る方法がない状況で、攻撃に対抗するために必要な範囲での反撃でなければ正当防衛は認められません。例えば、素手で襲ってくる相手に、いきなり銃で反撃するのは、過剰防衛にあたる可能性が高く、正当防衛は認められません。また、相手が既に攻撃をやめて逃走しているにもかかわらず、追いかけて攻撃するのも、正当防衛の範囲を超えていると判断される可能性があります。このように、正当防衛は、急迫不正の侵害から自分や他人を守るための、必要最小限度の反撃として認められます。正当防衛が認められるかどうかは、個々の状況によって判断されます。事件の状況、攻撃の程度、反撃の程度など、様々な要素を考慮し、総合的に判断されます。もし、このような状況に巻き込まれた場合は、警察や弁護士に相談することをお勧めします。
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過剰非難:正当防衛との違いとは?

突然の危険に直面したとき、人はとっさに自分を守るために行動を起こします。これは、生まれ持った本能的な反応と言えるでしょう。法律の世界では、このような状況下で、自分や他人の命、体、財産を守るために、やむを得ず行った違法行為を「正当防衛」と呼び、法律で認めています。例えば、ナイフを持った暴漢に襲われそうになった時に、とっさに近くにあった棒切れで反撃し、暴漢を負傷させてしまった場合などです。この場合、棒切れで暴漢を叩くという行為自体は暴行罪に該当しますが、自分を守るためのやむを得ない行為だったと認められれば、罪に問われません。しかし、この防衛行為が度を超えてしまった場合、「過剰防衛」となり、問題が複雑になります。正当防衛と過剰防衛の境界線は非常に曖昧で、判断が難しいケースも多いです。例えば、素手で襲ってきた相手に対して、持っていたナイフで反撃し、相手を刺してしまった場合などは過剰防衛にあたる可能性があります。この「過剰防衛」と似たような概念に「過剰非難」というものがあります。これは、差し迫った危険を回避するために行った行為ではあるものの、その状況から見て必要以上の反撃をしてしまった場合に適用される考え方です。例えば、暴漢がすでに逃走しているにもかかわらず、追いかけて暴行を加えた場合などは過剰非難にあたると考えられます。正当防衛は違法性が阻却され、罪に問われませんが、過剰防衛や過剰非難は違法とされます。しかし、過剰防衛や過剰非難の場合でも、その状況や心情によっては、刑が軽くされる、あるいは全く科されない可能性があります。例えば、夜道で突然襲われ、恐怖のあまり必要以上の反撃をしてしまった場合などは、裁判で情状酌量され、刑が軽減される可能性があります。このように、過剰防衛や過剰非難は、完全に許されるわけではないけれど、状況によっては責任を軽くしてもらえるかもしれない、という非常に難しい問題なのです。