
請求異議の訴え:強制執行からの防衛
金銭の貸し借りや売買契約などで、約束を破られた場合、裁判で勝訴した側(債権者)は、裁判所の判決や公正証書といった債務名義に基づき、相手の財産を差し押さえる強制執行ができます。しかし、借りたお金を既に返済していたり、売買代金の一部を支払っていて残額について話し合い中だったりと、債務者には債権者の請求に納得できない事情があるかもしれません。このような場合、債務者は「請求異議の訴え」を起こすことで、不当な強制執行から身を守ることができます。
この訴えは、債務名義に書かれた請求の内容に誤りや変更があることを裁判所に主張し、強制執行の停止や取り消しを求めるためのものです。例えば、既に完済した借金について債権者が誤って請求してきた場合、請求異議の訴えを起こすことで、大切な家や車などの財産が不当に差し押さえられるのを防ぐことができます。また、分割払いの約束をしていたのに、債権者が急に全額の支払いを求めて強制執行を開始した場合も、この訴えによって、改めて支払方法について話し合う機会を得たり、一部の支払いを認めてもらったりすることが期待できます。
請求異議の訴えでは、債務者は債務名義の内容が間違っていること、あるいは変更されていることを証明する必要があります。例えば、借金の完済を証明するために、領収書や銀行の送金記録などを証拠として提出します。また、債権者と新たな支払い方法について合意していた場合には、その内容を記した書面や電子メールなどを証拠として提出します。裁判所は、提出された証拠に基づいて、債権者の請求が正当かどうかを判断します。もし債務者の主張が認められれば、強制執行は停止または取り消しとなり、債務者は不当な財産侵害から守られます。このように、請求異議の訴えは、債権者と債務者の間の紛争を公正に解決し、債務者の権利を守るための重要な役割を果たしています。