法律 予備的併合:保険としての請求
裁判では、時に複数の訴えを同時に進める方法があります。これを併合といいます。その中でも、予備的併合は少し特殊な方法です。これは、第一の訴えが認められなかった場合に備えて、第二の訴えをあらかじめ用意しておく方法です。例えるならば、もしもの時の保険のようなものです。例えば、AさんがBさんに商品を売ったとしましょう。Bさんは商品を受け取ったにもかかわらず、お金を払っていません。そこでAさんは、Bさんに支払いを求める裁判を起こすことにしました。これが第一の訴え、いわば本命の訴えです。しかし、裁判では様々なことが起こります。もしかしたら、AさんとBさんの間の売買契約自体に問題があると判断されるかもしれません。そうなると、AさんはBさんにお金を請求することはできなくなります。商品を売った契約自体が無効になるからです。こんな時、Aさんは売った商品をBさんから返してもらう必要があります。これが第二の訴えです。予備的併合を使うと、この二つの訴えを同時に裁判所に提出できます。第一の訴えである「お金の支払い請求」が認められれば、それで解決です。しかし、もし認められなかった場合は、自動的に第二の訴えである「商品の返還請求」に移ります。Aさんは改めて裁判を起こす必要はありません。一度の裁判で二つの可能性を検討してもらえるため、時間と費用の節約になります。また、裁判が長引くのを防ぎ、問題の早期解決につながります。このように、予備的併合は訴訟戦略において重要な役割を担います。複数の可能性を想定し、あらかじめ準備することで、自身にとって有利な結果を導きやすくなるのです。特に、売買契約のように、結果が不確実な場合に有効な手段と言えるでしょう。
