義務

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離婚

離婚と間接強制:知っておくべき法的知識

夫婦が別れることになった時、様々な問題が持ち上がりますが、中でも子どもとの面会交流は特に難しい問題です。面会交流は、子どもにとって両親双方と関わりを持つ大切な権利であり、たとえ離婚しても守られるべきものです。しかし、一方の親が面会交流を拒否するケースも少なくありません。そのような時に、「間接強制」という方法を使うことができます。 間接強制とは、義務を果たさない親に対して、金銭的な負担を課すことで、心理的な圧力をかけ、義務の履行を促す制度です。例えば、「子どもと会う約束を守らない場合は、一日あたり5万円を支払う」という取り決めを公正証書で作成します。これは、お金で解決するという意味ではなく、あくまで面会交流の約束を守るように促すためのペナルティです。お金を払うことが強制されるのではなく、約束を守るように促すことが目的です。 この制度には、相手がどれくらい財産を持っているかを知らなくても利用できるという利点があります。相手が裕福かどうかではなく、約束を守らないこと自体にペナルティを課すからです。しかし、全く財産がない相手の場合には、この制度は効果がないため、裁判所が間接強制を認めない場合もあります。相手が支払えないペナルティを設定しても意味がないからです。 離婚の際に、この間接強制について知っておくことは重要です。面会交流は子どもの権利を守るための大切な制度であり、間接強制はそれを実現するための有効な手段の一つとなり得ます。ただし、この制度は万能ではなく、状況によっては効果を発揮しない場合もあることを理解しておく必要があります。専門家に相談し、自分の状況に合った解決策を見つけることが大切です。
法律

履行勧告:家庭裁判所の説得とは?

子を育てる責任は親にあります。夫婦が離婚した場合、子どもと一緒に暮らさない親は養育費を支払う義務があります。しかし、様々な事情で支払いが滞ってしまうことがあります。そのような時、家庭裁判所では支払いを促すための様々な方法を用意しています。その一つが履行勧告です。 履行勧告とは、家庭裁判所における調停や審判で決まった内容を守らない人に対し、裁判所が約束を守るように促す手続きです。例えば、離婚の際に養育費の支払いが滞っている場合や、子どもと会う約束が守られていない場合などに使われます。 この手続きは、裁判所が当事者双方から話を聞き、事情を詳しく調べた上で行われます。そして、合意した内容を守るように丁寧に説得し、助言します。 例えば、養育費の支払いが滞っている場合、裁判所は支払いが滞っている理由を尋ねます。もし、経済的な理由で支払いが難しい場合は、支払額や支払い方法について当事者同士の話し合いを促し、より現実的な解決策を一緒に考えます。また、子どもと会う約束が守られていない場合、子どもにとって最善の利益を念頭に置きながら、会う頻度や方法について助言を行います。 ただし、履行勧告には強制力はありません。相手が裁判所の勧告に従わなくても、罰則や強制執行などの措置を取ることはできません。しかし、裁判所からの勧告を受けることで、当事者が自らの行動を振り返り、問題解決に向けて自主的に動くきっかけとなることが期待されています。履行勧告は、問題を早期に解決し、子どもや当事者の負担を軽減するための大切な制度です。
法律

安全配慮義務:雇用者の責任

人が人と関わり合う社会において、互いを思いやり、危険から守ることは当然の務めです。これを安全配慮義務と言い、雇用関係のように、ある特定の人間関係において、特に重要視されます。これは、書面で取り交わした契約書に明記されていなくとも、社会全体の認識として、当然に守るべき義務とされています。会社と従業員の関係で言えば、会社は従業員が安心して働けるよう、安全な職場環境を整備する義務があります。危険を伴う作業を従業員にさせる場合には、適切な指示や指導を行い、安全な用具や装備を支給するなど、安全確保のために必要な措置を講じなければなりません。 例えば、建設現場で働く従業員に、安全帯を支給せずに高所作業をさせることは、安全配慮義務違反にあたります。また、真夏の炎天下で長時間屋外作業をさせる場合、休憩時間を適切に設けたり、水分補給を促したりするなどの対策を怠ることも、安全配慮義務違反となる可能性があります。従業員が精神的な負担を抱えている場合も同様です。過度な残業や、同僚からの嫌がらせなどによって、従業員の心身に不調が生じた場合、会社は状況を改善する義務があります。 この安全配慮義務の根拠となるのが、民法の信義則です。信義則とは、社会における誠実さや道徳に基づき、互いに正直で誠実な行動をとるべきだという原則です。安全配慮義務は、雇用関係に限らず、公務員と市民、教師と生徒、医師と患者など、様々な人間関係において適用されます。社会全体が安心して暮らせるよう、一人ひとりが互いを尊重し、安全に配慮する意識を持つことが大切です。
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贈与の条件:負担付き贈与とは?

贈与とは、財産を相手に無償で譲り渡す行為を指します。つまり、見返りを求めない好意によって財産を移転させることです。これに対し、負担付き贈与とは、この無償の贈与に一定の条件を付加したものを指します。贈与を受ける側、つまり受贈者には、贈与と引き換えに何らかの義務が課せられます。この義務を「負担」と呼び、負担付き贈与の核心を成す要素です。 この負担の内容は、金銭の支払いや労働の提供、特定の行為の遂行など、実に多様な形をとることが可能です。例えば、親が子供に家屋を贈与する場面を考えてみましょう。この際、親は子供に対して「毎月一定額の生活費を支払う」という条件を付けることができます。これが負担付き贈与の一例です。子供は家屋という財産を得る代わりに、親に生活費を支払う義務を負うことになります。 また、事業承継の場面でも、負担付き贈与はしばしば用いられます。例えば、会社経営者が後継者に事業を譲り渡す際に、「従業員の雇用を維持する」という条件を付けることが考えられます。この場合、後継者は事業を承継するのと引き換えに、従業員の雇用を守る義務を負います。このように、負担付き贈与は単なる財産の移転だけでなく、贈与者と受贈者双方の様々な意向や目的を反映させることができます。 負担の内容や程度は、贈与者と受贈者間の合意によって自由に決められます。ただし、負担が過度に重く、贈与の利益を著しく損なう場合には、実質的に売買とみなされる可能性もあります。贈与と売買の境界は曖昧な場合もあり、負担付き贈与を行う際には、その内容を慎重に検討する必要があります。また、負担の内容によっては、税金や登記手続きなどに影響が出る場合があるので、専門家への相談も検討すると良いでしょう。