探偵業界用語 最初から犯人が分かっている?牛の爪とは
「牛の爪」とは、捜査の入口で既に犯人が明らかな事件のことを指す警察内部で使われる隠語です。牛の大きな蹄の跡のように、犯人の足跡がはっきりと残っている状態を想像してみてください。犯人が誰かを特定することに時間を費やす必要がない、という意味が込められています。通常、事件が発生すると、警察はまず捜査を開始し、現場検証や聞き込みなどを通して証拠を集め、犯人を特定しようとします。まるで霧の中に隠れた犯人を探し出すような、地道で困難な作業です。しかし、「牛の爪」と呼ばれる事件の場合は、最初から犯人が誰なのかが分かっています。そのため、捜査の重点は犯行に至った理由や詳しい状況の解明、物的証拠の収集、そして犯人から真実を語らせることに移ります。例えば、夫婦喧嘩の末に夫が妻を殺害した事件を考えてみましょう。夫は犯行後、自ら警察に通報し、罪を認めたとします。この場合、誰が犯人かという点については疑う余地がありません。「牛の爪」の状態です。警察は、なぜ夫が妻を殺害したのか、どのような方法で殺害したのか、凶器はどこにあるのかといった点に焦点を当てて捜査を進めることになります。犯人の自供を得ることも重要ですが、自供の内容が真実と合致するかどうかを確認するために、裏付けとなる証拠を集める必要があります。このように、「牛の爪」は、牛の足跡を追うように、既に明らかになっている犯人の犯行の全容を解明していく捜査の様を表現した言葉と言えるでしょう。警察にとっては、犯人特定の手間が省ける一方で、事件の真相を明らかにし、適切な処罰につなげるための綿密な捜査が求められることになります。
