
偽装離婚の落とし穴:法的効力とリスク
見せかけの離婚、いわゆる偽装離婚とは、戸籍上は離婚の手続きを踏むものの、実際には夫婦として一緒に暮らし続けることを指します。まるで舞台の役を演じるように、書類の上では他人になるけれど、生活はこれまでと何も変わらない、そんな状態です。このような偽装離婚は、様々な理由で行われます。例えば、生活に困窮し、国からの支援である生活保護を受けるための資格を得るためや、返済できないほどの借金から逃れるため、あるいは税金を減らすためなど、人それぞれ事情は様々です。
一見すると、偽装離婚は法的にも問題ない、ただの都合の良い手続きのように思えるかもしれません。しかし、それは大きな間違いです。現在の法律では、偽装離婚であっても、ほとんどの場合、正式な離婚として認められてしまいます。なぜなら、離婚が成立するには「離婚届を出す意思」があるかどうかだけが重要で、「夫婦として一緒に暮らし続ける意思」があるかどうかは全く関係ないからです。つまり、役所に離婚届を提出し、それが受理された瞬間、たとえ今もなお夫婦として同じ屋根の下で暮らしていても、法律上は他人同士になってしまうのです。
この事実をきちんと理解していないと、後々、思わぬ落とし穴にハマってしまう可能性があります。例えば、財産を巡る争いが起きた時、すでに他人となっているため、財産分与の対象外とされてしまうかもしれません。また、どちらかが病気や事故で入院した場合、配偶者としての見舞いも制限される可能性があります。さらに、年金や保険金の受給資格にも影響が出る可能性があります。このように、偽装離婚は、一見手軽な解決策に見えて、実は大きなリスクを伴う行為なのです。安易な選択をする前に、専門家への相談や十分な情報収集を行いましょう。