正当行為

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法律

緊急避難:罪にならないための法的根拠

緊急避難とは、今まさに迫り来る危険を避けるため、他に方法がないときに、やむを得ず他人の権利や財産を侵害してしまう行為のことを指します。通常であれば法律に反する行為であっても、特定の条件を満たせば、罪に問われないことがあります。 例を挙げましょう。もし道を歩いている時に、突然暴漢に襲われそうになったとします。とっさに近くに置いてあった花瓶を投げつけて、暴漢を撃退したとしましょう。この場合、花瓶の持ち主にとっては、自分の所有物が壊されたわけですから、器物損壊という罪にあたる可能性があります。 しかし、もし暴漢から身を守るために他に方法がなく、花瓶を投げる以外に自分の身を守る術がなかったとしたらどうでしょうか。この場合は、緊急避難が認められる可能性が高まります。つまり、自分の命を守るという差し迫った必要性から、やむを得ず他人の花瓶を壊してしまったという行為が、正当化されるのです。 これは、法律が人の命や身体の安全を何よりも大切に考えているからです。生命の危険という緊急の状況下では、他人の財産を侵害する行為はやむを得ないと考えられ、違法性が否定される、つまり、罪にならないと判断されるのです。 緊急避難が成立するためには、いくつか条件があります。まず、避けようのない差し迫った危険が存在しなければなりません。それから、その危険を避けるために他に方法がないという必要性と、侵害した権利や財産と守ろうとした権利や財産のバランス、つまりどちらがより重要かということも考慮されます。例えば、小さな傷を負うのを避けるため高価な宝石を盗んだ場合などは、緊急避難は認められません。 このように、緊急避難は、危機的状況におけるやむを得ない行為を法律で守るための重要な制度と言えるでしょう。