
一身専属権:あなたを守る権利の盾
一身専属権とは、特定の個人にのみ属し、その人だけが行使できる権利のことです。まるでその人の影のように、決して他の人に移ったり、分け与えたりすることができません。他人に代理で行使してもらうことや、相続によって受け継ぐこともできない、いわばその人の存在に固く結びついた権利です。
例えば、誰かにひどい言葉を投げつけられたり、プライバシーを侵害されたりして、心に深い傷を負ったとします。このような場合、加害者に対して慰謝料を請求する権利が発生しますが、これは一身専属権にあたります。傷ついた本人にしか、その心の痛みは分かりません。ですから、慰謝料を請求できるのも、傷ついた本人だけなのです。家族や友人が代わりに請求することはできませんし、万が一、請求する前に亡くなってしまったとしても、その権利は相続人に引き継がれることはありません。
他にも、家族の間で発生する扶養請求権も、この一身専属権に含まれます。生活に困窮している人が、扶養する義務のある親や子どもに対して、生活費の援助を求める権利です。これも、扶養を必要としている本人にしか行使できない権利です。他の人に譲ったり、相続したりすることはできません。
このように、一身専属権は、個人の尊厳や生活を守るための重要な役割を果たしています。人が人として生きていく上で、最低限守られるべき権利であり、個人の尊重という観点から非常に重要な権利と言えるでしょう。