
離婚と悪意の遺棄:責任はどちらにある?
夫婦には共に暮らし、助け合う義務があります。これを一方的に破棄することを「悪意の遺棄」と言います。これは、正当な理由がないまま配偶者を放っておき、生活上の責任を放棄する行為です。
具体的な例としては、家族を顧みず、急に家を出て行ってしまう、あるいは、仕事で単身赴任をした後、家族のもとに戻る意思を示さず、一緒に暮らすことを拒み続ける、といった行動が挙げられます。夫が家を出て行ったきり連絡もなく、生活費も送金しない場合や、妻が子供を連れて家を出て行き、夫との連絡を一切断つ場合なども、悪意の遺棄に該当する可能性があります。
重要なのは、これらの行為に正当な理由があるかどうかです。例えば、配偶者から暴力を受けたり、ひどい暴言を浴びせられたりして、身の危険を感じて家を出た場合には、正当な理由があると認められる可能性があります。また、配偶者の浮気や浪費癖などの問題行動が原因で別居に至った場合も、正当な理由となる可能性があります。
この正当な理由の有無は、様々な要素を総合的に見て判断されます。別居に至った理由や夫婦がそれまでどのように暮らしてきたのか、生活費をどのように負担してきたのか、別居期間の長さなど、様々な事情を考慮し、それぞれの状況に合わせて慎重に検討されます。単に家を出て行った、連絡を取らないといった表面的な事実だけでなく、なぜそのような行動に至ったのか、背景にある事情まで丁寧に調べられます。
そして、この「悪意の遺棄」が認められると、離婚が認められる有力な理由となります。つまり、裁判で離婚を請求する際に、この「悪意の遺棄」を証明できれば、離婚が認められる可能性が高くなるということです。悪意の遺棄は、夫婦関係が破綻していることを示す重要な証拠となるのです。