応訴管轄

記事数:(1)

法律

応訴管轄:裁判管轄の例外

訴訟を起こす際に、まず考えなければならないのが、どの裁判所で審理してもらうかという問題です。これは管轄と呼ばれ、裁判所が事件を審理する権限のことです。すべての裁判所がすべての事件を審理できるわけではなく、それぞれの裁判所には、担当する地域や事件の種類が法律で決められています。たとえば、東京地方裁判所は東京という地域で起こった民事事件や刑事事件を、東京家庭裁判所は東京という地域で起こった家庭に関する事件を、それぞれ担当しています。 訴訟を起こす側の人は、この管轄をきちんと理解し、正しい裁判所に訴えを起こさなければなりません。もし、間違った裁判所に訴えを起こしてしまうと、裁判所はその訴えを却下し、審理してもらえません。たとえば、大阪で起きた事件を東京地方裁判所に訴えても、東京地方裁判所には管轄がないため、訴えは却下されてしまいます。 しかし、このような管轄の原則には例外があります。それが応訴管轄と呼ばれる制度です。本来であれば管轄権のない裁判所に訴えが提起された場合でも、被告が異議を申し立てずに答弁書などを提出した場合、その裁判所に管轄権が認められるというものです。たとえば、本来であれば大阪地方裁判所で審理されるべき事件を、誤って東京地方裁判所に訴えてしまったとします。この場合、被告が東京地方裁判所に管轄がないことを理由に異議を申し立てれば、訴えは却下されます。しかし、被告が異議を申し立てずに、内容の認否を記載した答弁書を提出した場合には、東京地方裁判所に管轄権が生じ、そのまま審理が進むことになります。これは、被告が管轄違いを主張しないということは、その裁判所で争うことに同意したとみなされるからです。応訴管轄は、被告の意思を尊重し、裁判の迅速化を図るための制度と言えるでしょう。 このように、応訴管轄は管轄に関する重要な例外規定です。訴訟当事者にとっては、管轄に関する基本的な知識と応訴管轄の制度を理解しておくことが不可欠です。