
債権回収の切り札:転付命令とは?
お金を貸したのに返済されない、裁判で勝訴してもお金が支払われない、このような困った状況に陥った経験はありませんか?相手が支払いに応じない場合、裁判所の力を借りて強制的に支払いを実行させる「強制執行」という手続きがあります。その中でも特に強力な手段となるのが「転付命令」です。
転付命令とは、一体どのような仕組みなのでしょうか。簡単に言うと、裁判所が債務者の財産を差し押さえるだけでなく、その財産に対する権利を債権者に移してしまう命令のことです。例えば、あなたが誰かに貸したお金が返ってこず、裁判で勝訴したとします。相手には銀行預金があるとします。通常の手続きでは、まず裁判所が相手の銀行預金を差し押さえます。そして、差し押さえた預金を換金し、あなたに支払うという手順を踏みます。しかし、転付命令を利用すると、預金を換金する手間を省き、預金に対する権利そのものをあなたに移転させることができます。つまり、あなたは直接銀行から預金を受け取ることが可能になるのです。
これは、債務者本人が支払いをするよりも確実で迅速な方法です。なぜなら、債務者が支払いを拒否したり、財産を隠したりする余地がなくなるからです。また、換金の手続きなどを省略できるため、時間と費用の節約にもつながります。転付命令は、債権を確実に回収するための効果的な手段であり、お金を貸した人が適切な権利を行使するために重要な仕組みと言えるでしょう。