
熟年離婚の法的側面と注意点
近年、長年連れ添った夫婦が、人生の晩年に離婚を選ぶ「熟年離婚」が増えています。老後の人生設計を見直す人が増えていることが、大きな要因の一つです。昔は定年まで働き、その後は夫婦で穏やかな余生を送るというのが一般的な考え方でした。しかし、今は人生100年時代と言われ、健康寿命も延びています。そのため、第二の人生をどう生きるかを真剣に考えるようになり、配偶者との関係を見直す人が増えているのです。
特に、子どもが独立した後の夫婦関係の変化は顕著です。子育て中は子どもの存在が夫婦の共通の関心事であり、夫婦関係の緩衝材のような役割を果たしていました。しかし、子どもが巣立った後、夫婦二人きりになった時に、長年心の奥底にしまい込んでいた不満や価値観の違いが表面化することがあります。例えば、夫は妻に家事全般を任せきりにしてきた、妻は夫の無関心に耐え続けてきたなど、長年の積もり積もった小さな不満が、熟年期を迎えて爆発するのです。このような状況下で、離婚という選択をする夫婦が増えているのは当然と言えるでしょう。
また、晩婚化も熟年離婚の増加に拍車をかけています。晩婚化によって結婚生活の期間が短くなるため、熟年期を迎えても、まだ人生の折り返し地点だと感じる人が増えているのです。そのため、残りの人生を自分らしく生きたい、新たな可能性に挑戦したいという気持ちが強くなり、離婚という選択をする人が増えていると考えられます。熟年離婚は、単なる夫婦間の問題ではなく、社会全体の家族のあり方や人生に対する考え方の変化を映し出していると言えるでしょう。