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法律

仮執行宣言:判決前に強制執行が可能に?

民事裁判で判決が出ても、すぐに効力が発生するとは限りません。相手が判決に納得せず、上級の裁判所に訴え直す「控訴」や「上告」をする可能性があるからです。判決が確定するまでには長い時間がかかり、その間に状況が変わってしまい、権利の実現が難しくなることもあります。例えば、お金の支払いを求める裁判で勝訴しても、判決確定前に相手が財産を隠してしまうかもしれません。 そこで、判決の効力発生を早めるための制度が「仮執行宣言」です。裁判官は、特定の条件を満たすと判断した場合、判決に仮執行宣言を付け加えることができます。仮執行宣言が付くと、判決が確定していなくても、確定した判決と同じように強制執行を行うことができるようになります。つまり、お金の支払いを命じる判決であれば、相手の財産を差し押さえることができ、建物の明け渡しを命じる判決であれば、強制的に建物を明け渡させることができます。 仮執行宣言は、権利の実現を迅速化し、時間の経過による損害の拡大を防ぐという重要な役割を果たします。ただし、仮執行宣言が付いた判決が上級審で覆される可能性もゼロではありません。もし、控訴や上告によって判決が変更された場合、仮執行に基づいて行った強制執行は取り消され、相手方に与えた損害を賠償する義務が生じます。そのため、仮執行宣言に基づく強制執行を行う際には、そのリスクも考慮する必要があります。例えば、控訴審で判決が覆される可能性が高いと判断される場合には、裁判所は仮執行宣言を付さないこともあります。また、仮執行宣言が付いた場合でも、相手方が担保を提供することで、仮執行を停止させることができます。このように、仮執行宣言は、権利の実現を早めるための強力な制度ですが、その利用には慎重な判断が必要です。