取消し

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法律

取り消し:なかったことにできる契約?

約束や契約は、当事者同士の自由な意思に基づいて行われるべきです。私たちの社会は、この自由な意思表示という大原則の上に成り立っています。しかし、現実には、様々な事情でこの原則が守られない場合があります。例えば、相手を騙したり、脅迫したりして、無理やり契約を結ばせるといったケースです。このような不正な手段によって歪められた意思表示に基づいて結ばれた契約は、果たして有効と言えるでしょうか?このような場合に、契約をなかったことにしてくれるのが「取り消し」という制度です。「取り消し」とは、瑕疵のある意思表示、つまり不正な影響を受けてなされた意思表示を無効にすることができる制度です。この制度があるおかげで、私たちは不正な契約から守られ、公正な取引を行うことができます。具体例を挙げてみましょう。ある人が、土地を売却しようと考えていました。そこに、別の者が近づいてきて、「この土地は将来、価値がなくなる」と嘘を言い、本来の価格よりはるかに安い値段で土地を買い取る契約を結びました。この場合、土地を売却した人は、騙されて、本来の価格より安い値段で土地を手放すという不当な契約を結ばされています。このような場合、売却した人は、契約を取り消すことができます。契約が取り消されると、その契約は最初から無効となります。つまり、上記の例では、土地の売買自体がなかったことになり、売却した人は土地を取り戻すことができます。このように、「取り消し」は、不正な手段によって不当な契約を結ばされた人を守るための、非常に重要な制度と言えるでしょう。ただし、取り消しを行使するためには、一定の期間制限があります。不正な行為があったことを知ってから一年以内、または契約締結から十年以内に、裁判所に取り消しを請求する必要があります。この期間を過ぎると、たとえ不正な手段で契約が結ばれていたとしても、取り消すことができなくなるので注意が必要です。