労働基準法

記事数:(3)

法律

チェック・オフ制度:仕組みと注意点

給与からの組合費天引き、いわゆるチェックオフとは、会社が従業員に代わって組合費を集め、組合にまとめて渡す仕組みです。これは、組合活動の資金源を確保する上で、なくてはならない役割を果たしています。従業員一人ひとりから集める手間を省き、組合員の手間を減らす効果があります。会社にとっても、組合費の集金に関わる事務作業を簡単にするメリットがあります。しかし、チェックオフを行うには、法律で決められた条件を満たす必要があります。労働基準法第24条第1項に基づき、会社と従業員の間で合意を交わすことが不可欠です。この合意がないままチェックオフを行うと、法律違反になる可能性があるので、注意が必要です。合意の内容にも法的制限があります。例えば、天引きできる組合費の種類や金額、合意の有効期限などをはっきりさせる必要があります。従業員一人ひとりから同意を得る必要はありませんが、合意の内容は、従業員にきちんと知らせる必要があります。チェックオフは便利な仕組みですが、法律で定められた条件を守ることは非常に重要です。例えば、天引きできるのは組合費だけで、それ以外のものを天引きすることはできません。また、従業員が組合を脱退した場合、脱退届が会社に届いた月の翌月分から、チェックオフを停止する必要があります。チェックオフを実施する際には、労働基準監督署に相談するなど、法令を遵守しているか確認することが大切です。法令違反をすると、会社は罰則を受ける可能性があります。また、従業員からの信頼を失うことにも繋がりかねません。チェックオフは、会社と組合、そして従業員にとってメリットのある仕組みですが、正しく運用するために、関係者全員が法令の理解を深めることが重要です。
法律

損害賠償の約束:労働者を守る法律

私たちは、日々の暮らしの中で、物を買ったり、電車に乗ったり、家や部屋を借りたりと、様々な約束事を交わしています。これらは全て、契約と呼ばれる取り決めによって成り立っています。契約には、お互いの権利と義務が定められており、例えば何かを買った場合には、お金を払う義務が生じます。逆に、お店側は、買った物を渡す義務があります。もし、約束した義務を果たさない場合はどうなるでしょうか。例えば、壊れた商品を渡されたり、期日までに商品が届かなかったりした場合、損害を受けた側には、損害を賠償してもらう権利が生じます。この損害賠償について、あらかじめ金額を決めておくことを、賠償額の予定と言います。あらかじめ金額を決めておけば、後からトラブルになった際に、スムーズに解決できるというメリットがあります。しかし、働く人との契約、つまり労働契約の場合、この賠償額の予定は、原則として認められていません。これは、労働基準法という法律で定められています。なぜこのような決まりがあるのでしょうか。それは、働く人の立場を守るためです。もし、賠償額の予定が認められると、雇う側が一方的に高い金額を設定し、働く人に不当な負担を強いる可能性があります。例えば、ちょっとしたミスで高額な賠償金を請求されたり、辞めたいと言いにくくなるなど、働く人が不利な立場に追い込まれることが考えられます。労働基準法は、働く人の権利を守り、最低限の生活を保障するために設けられた法律です。賠償額の予定の禁止も、その理念に基づいたものです。働く人にとって、安心して働ける環境を作ることは、社会全体にとっても重要なことと言えるでしょう。
法律

36協定:残業の仕組みを正しく理解しよう

働く人々の心身の健康を守り、より良い生活を送れるようにするために、労働基準法では、働く時間や休みの日数についてルールを設けています。しかしながら、会社の仕事を進める上では、急に起こる出来事や、一年を通して特に仕事が忙しい時期など、法律で定められた時間を超えて働かなければならない時もあります。そのような場合でも、働く人の権利を不当に奪うことなく、必要なだけ働いてもらうためのしくみが「36協定」です。これは、会社とそこで働く人々が話し合って同意することで、法律で決められた時間よりも長く働いたり、休みの日に働いたりすることを可能にするための約束事です。労働基準法という法律の36番目の条文に書かれていることから、「36協定」と呼ばれています。この協定があるおかげで、会社は必要な人数の働き手を確保し、滞りなく事業を進めることができます。同時に、働く人は、決められた時間よりも長く働いたり、休みの日に働いたりした場合には、基本の賃金に加えて割増の賃金を受け取る権利が守られます。例えば、ある会社で急に大きな注文が入り、通常の勤務時間内ではすべてを処理できないという状況になったとします。36協定を結んでいれば、会社は従業員に残業を依頼し、その分きちんと割増賃金を支払うことで、急な仕事にも対応できます。従業員も生活に必要なお金を得ながら、会社に貢献することができます。つまり、36協定は、会社とそこで働く人の両方にとって、より融通の利く働き方を可能にするための大切な役割を担っているといえます。ただし、この協定を結ぶ際には、働く人の健康に十分配慮し、無理な長時間労働を強いることがないように注意しなければなりません。また、協定の内容はきちんと働く人に説明し、同意を得ることが重要です。そうすることで、働きがいのある、より良い職場環境を作っていくことができるのです。