
別件逮捕の法的側面:その光と影
別件逮捕とは、ある重大な事件について捜査を進める中で、その事件での逮捕に必要な証拠が十分に集まっていない時に、別の軽い事件で容疑者を逮捕し、身柄を拘束する捜査手法です。
例を挙げると、殺人事件の容疑者がいるとします。しかし、今の段階では殺人を立証するだけの証拠が足りません。ところが、この容疑者が過去に運転免許証を持たずに自動車を運転していた事実が判明したとします。この場合、警察は、殺人事件の捜査を進めるために、まずは無免許運転でこの容疑者を逮捕する、ということがあり得ます。逮捕して身柄を拘束している間に、殺人事件の証拠を集めるわけです。
一見すると、回りくどい方法のように思えますが、別件逮捕は捜査を進める上で重要な役割を果たすことがあります。なぜなら、重大な犯罪の容疑者が逃げてしまったり、証拠を隠滅してしまう可能性があるからです。別件逮捕によって身柄を拘束することで、こうした事態を防ぎ、事件の真相を明らかにする捜査をスムーズに進めることができるのです。
しかし、この別件逮捕という制度は、常に議論の的となっています。逮捕の本来の目的は、裁判にかけるためです。しかし、別件逮捕では、軽い罪で逮捕しておいて、その間に本来の目的である重大事件の捜査を進めることになります。そのため、本当に軽い罪で逮捕したのか、それとも重大事件で逮捕するための口実として軽い罪を利用しただけなのか、という点が問題視されるのです。別件逮捕が適正に行われているかどうかを常に監視する必要があると言えるでしょう。