
遺産共有:相続の知恵
遺産を分け合うということは、亡くなった方が残した財産を、複数の相続人がみんなで所有する状態のことです。これは、亡くなった時点から遺産分割が終わるまでの、いわば仮の状態です。たとえ遺書があって、誰がどれだけの財産をもらうかがはっきり書いてあっても、分割の手続きがすべて終わるまでは、相続人全員が共同の持ち主として、遺産全体に対する権利と義務を持ちます。つまり、特定の相続人が「これは自分のものだ」と主張することはできず、すべての財産は相続人全員の共同財産となります。
具体的に説明すると、例えば、故人が家と土地、そして預貯金を残した場合、遺産分割が完了するまでは、これらの財産はすべて相続人全員の共有財産となります。仮に相続人が3人いるとすると、それぞれが3分の1の権利を持つというわけではなく、家全体、土地全体、預貯金全体を3人で共同所有していることになります。そのため、一人の相続人が勝手に家を売却したり、預貯金を引き出したりすることはできません。
このような共有状態は、遺産分割の協議がまとまり、誰がどの財産をどれくらいもらうかが決まった時点で終わります。例えば、協議の結果、一人が家と土地を相続し、もう一人が預貯金を相続することになれば、それぞれの財産は各相続人の単独所有となり、共有状態は解消されます。また、共有状態にある間は、相続人全員の同意なしに遺産を処分することはできません。そのため、遺産分割協議は、相続人全員が納得する形で進めることが重要です。もし、協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判によって遺産分割が行われます。