
適法な行為でも補償?損失補償の仕組み
損失補償とは、国や都道府県、市町村といった公の機関が、法にのっとって正しい仕事をした結果、個人が所有する物に損害を与えてしまった場合に、その損害を金銭や物で償う制度です。これは、公の機関の行いが法にかなっていても、個人の権利を不当に侵してはならないという考え方に基づいています。
たとえば、道路を新しく作るために、個人が所有する土地を買い取らなければならない場合を考えてみましょう。この時、土地の所有者には、正当な金額が支払われます。もし、所有者が大切に育ててきた庭木があったとしたら、その木の価値も評価され、金額に反映されます。また、土地を明け渡すことで、所有者が引っ越しを余儀なくされた場合、引っ越しにかかる費用も補償の対象となります。
このように、損失補償は、公共の利益と個人の権利のつりあいを保つための大切な制度です。
損失補償は、単なる損害賠償とは違います。損害賠償は、誰かが過失によって他人に損害を与えた場合に、その損害を償うためのものです。例えば、不注意で車をぶつけてしまった場合などがこれにあたります。一方、損失補償は、公の機関が法に基づいた正しい仕事をした結果、やむを得ず個人の財産に損害を与えてしまった場合の特別な制度です。つまり、公の機関に過失がなくても、損害が生じた場合には補償が行われるのです。
損失補償は、国民の財産権を守るための重要な役割を担っています。公の機関が、道路や学校、病院など、私たちが生活していく上で必要なものを作る際には、どうしても個人の財産に影響を与えることがあります。そのような場合でも、損失補償制度があることで、個人の権利が守られ、安心して暮らしていくことができるのです。