債務者

記事数:(8)

法律

債務引受け:免責型と同意の重要性

お金を借りた人が返済義務を他の人に引き渡すことを、債務引受けと言います。この債務引受けには、大きく分けて二つの種類があります。一つは、元々の借りた人も引き続き返済義務を負う併存的債務引受けです。これは、保証人に似ていますが、保証人と違って、債権者は元々の借りた人にも、新しく返済義務を負う人にも、直接返済を請求できます。例えば、親が子供のために借金の返済義務を引き受け、親子で一緒に返済していく場合などがこれに当たります。もう一つは、元々の借りた人が返済義務から解放される免責的債務引受けです。こちらは、元々の借りた人に代わって、新しく返済義務を負う人が全ての責任を負うことになります。この免責的債務引受けは、債権者にとって影響が大きいため、特に注意が必要です。元々の借りた人に比べて新しく返済義務を負う人の財産が少ない場合、債権者が回収できる金額が減ってしまう可能性があります。例えば、安定した収入のある会社員が借りたお金を、収入の少ない学生が引き受けた場合、返済が滞ってしまうかもしれません。また、たとえ新しく返済義務を負う人に十分な財産があったとしても、今まで信頼関係を築いてきた借りた人が変わることで、債権者にとっては心理的な不安が生じることもあります。免責的債務引受けを行う場合は、債権者の同意が必要です。債権者は、新しく返済義務を負う人の財産状況や返済能力などを確認し、納得した上で同意します。債権者の同意なしに債務引受けを行うことはできません。債務引受けは、当事者間だけでなく、債権者にも大きな影響を与えるため、慎重に進める必要があります。
裁判

会社再生の道:民事再生とは

経営難に陥り、倒産の危機に直面する会社は後を絶ちません。資金繰りが悪化し、もはや自力での再建が不可能に思える状況でも、諦めるのはまだ早いかもしれません。法的手段を用いることで、事業を継続しながら窮地から脱却する道が開ける可能性があります。その有効な手段の一つが、民事再生手続きです。民事再生手続きとは、裁判所の監督の下で、会社が事業を継続しながら債務を整理し、再建を目指すための制度です。この手続きでは、まず会社が再生計画案を作成します。この計画案には、債務の削減や返済方法の変更、事業の再編など、会社を再生するための具体的な方策が盛り込まれます。そして、この計画案を裁判所と債権者が承認することで、手続きが進んでいきます。民事再生手続きの大きなメリットは、事業を継続できる点です。倒産手続きとは異なり、会社は営業を続けながら再建に取り組むことができます。これにより、従業員の雇用を守り、取引先との関係を維持しながら、再建を目指すことが可能となります。また、裁判所の監督下にあるため、債権者からの取り立てや訴訟を一時的に停止することもできます。これにより、会社は経営の立て直しに専念できる環境が整います。民事再生手続きは、すべての会社に適用できるわけではありません。一定の要件を満たす必要があります。例えば、債務超過の状態であること、再生の見込みがあることなどが挙げられます。これらの要件を満たしていない場合、民事再生手続きを利用することはできません。経営難に陥った際には、早急に専門家に相談することが重要です。弁護士や会計士などの専門家は、会社の状況を的確に判断し、最適な解決策を提案してくれます。民事再生手続き以外にも、様々な法的手段や経営支援策があります。専門家の助言を得ることで、会社を窮地から救い、再び成長軌道に乗せることができるかもしれません。
法律

債務不履行と法的措置

約束事を守らないことを、法律では債務不履行といいます。これは、あらかじめ交わした契約で決めた義務を期日までに果たさないことを意味します。お金の支払いが期日までにされていない場合が、代表的な例です。例えば、毎月決まった日に支払うことになっている住宅の借り入れ金の返済が遅れている状態は、債務不履行にあたります。また、クレジットカードで買った商品の代金を支払わない場合も同様です。お金の支払い以外にも、様々なものが債務不履行の対象となります。例えば、お店で買い物をしたのに商品を渡してもらえない、頼んだ工事が期日までに終わらないといった場合も、債務不履行にあたります。契約で決めた物の受け渡しやサービスの提供が期日までにされていない場合も、債務不履行となるのです。重要なのは、契約でどんな義務が決められていたかです。口約束だけでなく、書面で残されている契約内容が重視されます。契約書で「この日までに、これをします」と約束していたのに、それが守られていない場合は、債務不履行の状態にあるといえます。債務不履行は、債権者、つまり約束を守ってもらえなかった側に大きな損害を与える可能性があります。お金の支払いが滞れば、生活に困る場合もありますし、商品が届かなければ、事業に支障が出る可能性もあります。そのため、債務不履行に対しては、督促状を送ったり、裁判を起こしたりするなど、適切な対応をする必要があります。場合によっては、財産の差し押さえといった厳しい措置が取られることもあります。債務不履行は、軽い気持ちで見過ごせる問題ではありません。約束はきちんと守ることが大切であり、万が一守れない場合は、すぐに相手に連絡し、誠意をもって対応することが重要です。
法律

弁済代行で債務整理をスムーズに

金銭のやり取りでもつれた糸を解きほぐすように、弁護士が代理人となって債務整理を行う方法のひとつに、弁済代行があります。これは、裁判所の手を借りずに行う任意整理という手続きの中で、弁護士が債務者に代わって債権者への支払いを行う仕組みです。任意整理では、弁護士が債権者と直接話し合い、借金の減額や返済方法の変更を目指します。この際、弁護士は債務者の代わりに、毎月の返済を代行することも行います。これが弁済代行です。具体的には、債務者は毎月一定額を弁護士に支払い、弁護士がそれをそれぞれの債権者に分配します。債務者は各債権者と個別に連絡を取る必要がなくなり、心にのしかかる重荷を軽くすることができます。複数の債権者への返済期日を管理したり、それぞれに連絡を取ったりする手間が省けるため、返済忘れを防ぐ効果もあります。弁済代行を利用することで、債務者は煩雑な手続きから解放され、生活再建に集中することができます。また、弁護士が間に入ることで、債権者からの連絡や督促に対応する負担も軽減されます。平穏な生活を取り戻すための第一歩として、弁済代行は有効な手段となるでしょう。ただし、弁済代行を利用するには弁護士費用が発生するため、事前に弁護士とよく相談し、費用や手続きの流れを確認することが大切です。それぞれの状況に合わせて、最適な方法を選択することが重要です。
法律

債権譲渡:知っておくべき落とし穴

金銭の受け渡しを約束する権利、いわゆる債権を他の人に渡すことを債権譲渡と言います。これは、今現在持っている債権だけでなく、将来発生する売掛金なども対象となります。しかし、譲渡の合意をしたからといって、すぐにその効力が発生するわけではありません。いくつかの条件を満たす必要があります。基本的には、譲渡する人と譲り受ける人の間で合意が成立すれば、譲渡の効力は発生します。これは、当事者間で交わした契約に基づくものであり、お金を支払う義務のある人の同意は必要ありません。誰に支払うかはお金を支払う人の問題ではなく、お金を受け取る権利を持つ人同士の問題であるという考え方によるものです。しかし、譲渡によってお金を支払う人の負担が増えるような場合には、その人の同意が必要になります。例えば、お金を支払う期日や方法が変わる場合です。支払う人の同意なしに、一方的に支払条件を変更することは許されません。これは、支払う人の負担を一方的に増やすことを防ぐためです。例えば、元々年末にまとめて支払うことになっていたものを、毎月分割で支払うように変更されると、支払う人は毎月支払う手間が増えます。また、手数料の負担なども発生する可能性があります。このような債務の内容の変更を伴う譲渡は、債務者の保護のために同意が必要となるのです。
法律

弁済費用:どちらが負担する?

お金の貸し借りや物の売買など、私たちの暮らしの中で交わされる様々な約束事を法律では「契約」と呼びます。そして、契約によって発生した義務を果たすことを「弁済」といいます。例えば、お金を借りたのであれば返す、物を買ったのであれば代金を支払う、といった行為が弁済にあたります。この弁済には、時としてお金がかかる場合があります。例えば、遠方に住む人に送金する場合の送金手数料や、買った物を郵送してもらう場合の送料などが挙げられます。では、これらの弁済にかかる費用は一体誰が負担するべきなのでしょうか。法律では、特に何も取り決めがない限り、原則としてこれらの費用は債務を負っている側、つまり「債務者」が負担することになっています。具体的に考えてみましょう。お金を借りた場合、借りたお金を返す、つまり債務を履行するために必要な費用は、借りた人が負担しなければなりません。例えば、銀行振込で返済する場合、振込手数料は借りた人持ちとなります。また、インターネットで買い物をした場合、購入した商品を届けてもらう、つまり売買契約における債務を履行するために必要な送料は、買った人持ちとなります。このように、債務者は、債務を完全に履行する責任を負っているため、弁済にかかる費用も負担する必要があるのです。ただし、当事者間で事前に異なる取り決めをしていた場合は、その取り決めに従うことになります。例えば、売買契約において、送料は売り手が負担することで合意していた場合は、売り手が送料を負担することになります。また、債権者側の都合で弁済場所が変更になった場合など、債務者の責めに帰すべからざる事由によって弁済費用が増加した場合には、債権者がその増加分を負担することになります。このように、弁済費用は原則として債務者が負担しますが、状況によっては例外も存在します。契約内容をよく確認し、疑問点があれば専門家に相談することが大切です。
法律

債権譲渡:知っておくべき基礎知識

債権譲渡とは、ある人が持つ債権を他の人に渡すことを言います。お金を貸したり、物を売ったりした時に発生する、お金を請求する権利が債権です。例えば、山田さんが田中さんに100万円貸したとします。この時、山田さんは田中さんに対して100万円の債権を持ちます。この債権を、山田さんが佐藤さんに渡すことができます。これが債権譲渡です。譲渡が行われると、佐藤さんは田中さんに対して100万円を請求できるようになります。山田さんは、もう田中さんに対して請求することはできません。債権はまるで物のように、人から人へと渡っていくのです。債権譲渡は、様々な理由で行われます。例えば、売買や贈与、相続などが挙げられます。山田さんが佐藤さんにお金を貸した代わりに債権を渡す、つまり売買するケースもあります。また、好意から無償で債権を渡す、贈与という場合もあります。さらに、山田さんが亡くなった際に、相続人である佐藤さんに債権が渡される、相続という場合もあります。会社同士では、資金繰りを良くするために行われることもよくあります。会社がすぐに現金が必要な時、将来受け取る予定のお金である債権を他の会社に渡すことで、今すぐ現金を得ることができるのです。債権譲渡は、私たちの暮らしの様々な場面で役立っています。債権を渡す人にとっては、債権を現金に換えることができるという利点があります。一方、債権を受け取る人にとっては、安く債権を買うことができるという利点があります。また、債権譲渡は、経済活動を活発にする効果も期待されます。お金の流れが良くなり、経済全体が潤うことに繋がるのです。そのため、債権譲渡に関する法律は、社会や経済が円滑に動くために欠かせないものとなっています。
法律

債務引受けの種類と注意点

金銭の借り受けによる負い目、いわゆる借金を他の人が代わりに引き受けることを、債務引受けと言います。これは、元々借金を抱えていた人と、その借金を代わりに返す人とが契約を結ぶことで成立します。例えば、家の借金を抱えている人が、その家を売却するとき、購入者が家の借金も一緒に引き受ける場合があります。この場合、購入者は売主の住宅ローンという借金を、債務引受けという形で肩代わりすることになります。この債務引受けを行う際には、お金を貸した側の承諾が必要な場合と、そうでない場合があります。承諾が必要な場合は、お金を貸した人、元々借金を抱えていた人、そして新たに借金を肩代わりする人の3者で話し合い、同意を得る必要があります。承諾が不要な場合は、元々借金を抱えていた人と、肩代わりする人の2者間で合意すれば手続きを進めることができます。債務引受けは、会社同士の合併や買収、事業の引継ぎなど、様々な場面で活用されます。例えば、会社が合併する際に、合併される側の会社の借金を合併する側の会社が引き受けることがあります。また、事業を誰かに譲り渡す際にも、事業に付随する借金を譲り受ける人が引き受けることがあります。債務引受けの手続きは複雑な場合もあり、状況によっては法律の専門家の助言が必要となることもあります。例えば、債務引受けの種類によっては、保証人をつける必要があったり、税金に関する手続きが必要となる場合もあります。また、契約の内容によっては、予期せぬトラブルが発生する可能性もあります。そのため、債務引受けを行う際は、事前に専門家に相談し、手続きや必要な書類、注意点などを確認することが大切です。専門家のサポートを受けることで、手続きをスムーズに進めることができ、後々のトラブルを避けることにも繋がります。