
伝聞証拠:真実を語る?
事件や事故の真相を明らかにするために、証拠は欠かせません。証拠には、犯行現場に残された指紋や凶器といった直接的なものから、目撃情報のように間接的に事実を示すものまで、様々な種類があります。その中で、伝聞証拠は他の人から聞いた話を伝えるという特殊な性質を持っています。
例えば、殺人事件の裁判を考えてみましょう。被告人が被害者を殺害するところを実際に目撃した人をAさんとします。Aさんは事件の直接的な証拠を握っている重要な証人です。しかし、Aさんが病気や海外渡航などで裁判で証言できない場合を考えてみてください。このとき、Aさんから話を聞いたBさんが裁判で「Aさんは被告人が被害者を殺害したと言っていました」と証言することがあります。これが伝聞証拠です。Bさんは事件を直接見ていません。AさんがBさんに語った内容をBさんが裁判で伝えているため、Bさんの証言は間接的な証拠になります。
伝聞証拠は、直接的な証拠とは異なり、真実を歪めてしまう危険性があります。なぜなら、AさんがBさんに話を伝える過程で、記憶違いや誇張、誤解などが生じる可能性があるからです。また、Bさんが故意に事実と異なる内容を証言する可能性も否定できません。このように、伝聞に基づく証言は、真実に合致しない恐れがあるため、裁判ではその信憑性を慎重に検討する必要があります。伝聞証拠は、他の証拠と照らし合わせたり、証言者の信頼性を確認したりするなど、様々な角度から検証しなければなりません。場合によっては、伝聞証拠だけでは証拠として不十分と判断されることもあります。