
緊急逮捕:逃亡阻止の最終手段
緊急逮捕とは、罪を犯した疑いが強く、放っておくと逃げたり証拠を隠したりする恐れがある場合に、裁判官の許可を得る前でも逮捕できる制度です。通常、逮捕するには裁判官が出す逮捕状が必要ですが、緊急逮捕はこの例外にあたります。ただし、逃げる心配がない場合や、逮捕する必要がない場合は、緊急逮捕はできません。
緊急逮捕できるのは、重い罪を犯した疑いがある場合です。具体的には、死刑や無期懲役、あるいは懲役や禁固3年以上の罪にあたる犯罪を犯したと疑うに足りる十分な理由がある場合です。「疑いがある」とは、単に怪しいというだけでなく、客観的に見て罪を犯したと判断できるだけの証拠や状況が必要です。例えば、犯行現場から逃げるところを見られた、犯行に使った道具を持っていた、自分で罪を認めた、といった具体的な証拠や状況がなければなりません。
また、緊急逮捕は、時間との勝負で証拠隠滅の恐れがある場合などに限られます。例えば、殺人事件で犯人が凶器を隠し持っていて、逃亡すれば凶器を処分してしまう可能性が高い場合などが考えられます。あるいは、共犯者がいて、逃亡すれば口裏を合わせたり、関係者に圧力をかけたりして証拠隠滅を図る恐れがある場合も緊急逮捕が認められる可能性があります。
緊急逮捕された場合でも、必ずしも罪を犯したと決まったわけではありません。逮捕後、警察はさらに詳しく捜査を行い、証拠を集めます。そして、証拠が十分に集まり、罪を犯したと認められる場合には、検察官が裁判所に起訴します。裁判で有罪が確定して初めて、刑罰を受けることになります。緊急逮捕はあくまでも、事件を迅速に解決し、真相を明らかにするための手段の一つなのです。そのため、緊急逮捕されたとしても、落ち着いて警察の捜査に協力し、自分の正当な権利を守ることが大切です。