事情変更の原則

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法律

契約を見直す:事情変更の原則

人と人との間で交わされる約束事は、将来どうなるかを考え、その見込みに基づいて内容を決めます。約束を交わす時点では、全てが順調に進むと考えているのが普通です。しかし、人生は時として、思ってもみない出来事が起こるものです。例えば、大きな自然災害に見舞われたり、世界中に疫病が広まったり、あるいは経済が大きく変動したりするかもしれません。これらは、約束を交わした後に起こる、誰もが予測できなかった出来事です。 このような想定外の出来事が発生すると、当初決めた約束の内容をそのまま守ることが非常に難しくなったり、一方だけが大きな不利益を被るといった不公平な結果につながったりすることがあります。例えば、農作物を一定量納入する契約を結んでいたとします。ところが、予期せぬ大雨で畑が水浸しになり、収穫量が大幅に減ってしまったとしましょう。この場合、当初の約束通りに農作物を納入することは、農家にとって大きな負担となります。また、納入を受ける側も、不足分を他の方法で調達しなければならず、予定外の費用が発生するかもしれません。 このような場合、約束の内容をそのまま守ることが本当に正しいと言えるでしょうか。本来、約束は守るべきものですが、予期せぬ出来事によって状況が大きく変わってしまった場合、無理に約束を守ることが必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。そこで考え出されたのが「事情変更の原則」です。これは、約束を交わした後に想定外の出来事が起こり、約束の内容をそのまま守ることが著しく困難になったり、あまりにも不公平な結果になったりする場合には、約束の内容を変更したり、場合によっては約束を解消したりできるという考え方です。この原則は、予期せぬ出来事によって生じる不利益を公平に分担し、より良い解決策を見出すための重要な考え方と言えるでしょう。