
間接事実:真実を照らす影
間接事実とは、証明したい事実を直接的に示すものではなく、それと関連性のある別の事実から推測させる事実のことを指します。これは、水面に映る月明かりを想像すると分かりやすいでしょう。月自体は直接見ることができないものの、水面に映る月の光、つまり波紋から月の存在を推測することができます。この水面に映る光が間接事実、そして月そのものが証明したい事実、すなわち主要事実にあたります。
具体的な例を挙げましょう。誰かがお金を借り、後日、きちんと返済したかどうかが争点になったとします。もし返済したことを示す領収書や銀行の取引記録といった直接的な証拠がない場合、どのように返済の事実を証明すれば良いでしょうか。このような場合に間接事実が重要な役割を果たします。例えば、お金を貸した人が、その後一度もお金を返してほしいと要求していないとします。催促の手紙や電話がない、あるいは会話をした際に返済について何も触れていないといった状況です。これらの状況は直接的には返済を証明するものではありません。しかし、もし本当に返済されていなければ、お金を貸した人は当然返済を要求するはずです。そうした要求がないということは、既に返済が済んでいることを間接的に示唆していると言えるでしょう。
このように、間接事実はそれ自体では主要事実を証明する力はありません。しかし、複数の間接事実が積み重なることで、主要事実の存在を強く推認させることができます。裁判などでは、直接的な証拠がない場合、間接事実を積み重ねることで事実認定を行うことが多くあります。間接事実は、主要事実を明らかにするための重要な手がかりとなるのです。