心的外傷後ストレス障害:その理解と向き合い方

調査や法律を知りたい
先生、『心的外傷後ストレス障害』って、何かの略語ですか?

調査・法律研究家
はい、そうです。『心的外傷後ストレス障害』は『PTSD』の略語で、英語の『Post Traumatic Stress Disorder』の頭文字をとったものです。心に傷を負った後に起こるストレスによる障害のことですね。

調査や法律を知りたい
『心に傷を負った後』というのは、例えばどんな時ですか?

調査・法律研究家
例えば、大きな事故にあったり、災害に遭ったり、暴力や虐待を受けた時など、とても怖い思いや辛い経験をした後などに起こることがあります。その経験がトラウマとなり、その後も苦しむことになるのです。
PTSDとは。
『心的外傷後ストレス障害』(こころてきがいしょうご すとれすしょうがい)について。これは、過去のつらい出来事が忘れられず、心に傷を負った状態のことです。たとえば、虐待を受けたことがきっかけで、眠れなくなったり、必要以上に周りを警戒したりするなどの症状が現れます。
心的外傷後ストレス障害とは

心の外傷後ストレス障害、いわゆる心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、強い精神的な衝撃を受けた経験、すなわち心的外傷が原因で発症する心の病気です。命の危険を感じるような出来事、激しい恐怖やどうしようもない無力感を味わうような経験の後、その記憶が突然よみがえってきたり、怖い夢にうなされたり、必要以上に警戒するなどの症状が現れます。 例えば、事故や災害、犯罪に巻き込まれたり、虐待を受けたり、戦争を経験したりするといった出来事が、心的外傷となることがあります。
これらの症状は、心的外傷から自分を守るための、本来は自然な反応です。しかし、日常生活に問題が生じるほど症状が強い場合、心的外傷後ストレス障害と診断されることがあります。具体的な症状としては、心的外傷に関する記憶が繰り返し頭に浮かび、悪夢にうなされるといった症状や、心的外傷と似た状況を避けようとしたり、感情が麻痺したりするといった症状、常に緊張状態にあり、些細な刺激にも過剰に反応するといった症状などが見られます。
心的外傷後ストレス障害は、特別な人だけがなる病気ではありません。誰もが経験する可能性のある病気です。心が強い、弱いといったこととは関係ありません。ですから、心的外傷後ストレス障害についての正しい知識を持ち、適切な対応方法を知っておくことが大切です。早期に適切な治療を受ければ、症状の改善が見込めます。一人で悩まず、家族や友人、専門機関などに相談することが重要です。周りの人も、温かく見守り、支えていくことが必要です。
| PTSDとは | 強い精神的な衝撃を受けた経験(心的外傷)が原因で発症する心の病気 |
|---|---|
| 原因 | 命の危険を感じる、激しい恐怖、どうしようもない無力感を味わう経験 |
| 症状 |
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| 診断 | 日常生活に問題が生じるほど症状が強い場合 |
| その他 |
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心的外傷後ストレス障害の症状

心に深い傷を負った後に起こる、心的外傷後ストレス障害(PTSD)。その症状は人によって様々ですが、大きく分けて三つの種類に分けられます。一つ目は、過去のつらい出来事をまるで今まさに体験しているかのように感じる「再体験症状」です。突然、過去の出来事が鮮明に蘇る「フラッシュバック」や、その出来事を題材にした悪夢にうなされる、出来事と似たような場面や物事に出くわすと強い苦痛を感じる、などが挙げられます。まるで時間が巻き戻ってしまったかのように、過去の恐怖に囚われてしまうのです。
二つ目は、つらい記憶を思い出させないようにする「回避症状」です。過去の出来事を思い出させる場所や人、状況を避けるようになります。また、出来事に関する記憶や感情を無理に抑え込もうとしたり、周囲の人や出来事への関心が薄れてしまったりすることもあります。過去を思い出さないように、心を閉ざしてしまうのです。
三つ目は、常に緊張状態にある「過覚醒症状」です。少しの音にも驚きやすくなったり、いつも不安や緊張を感じていたり、些細なことで怒りやすくなったりします。また、集中力の低下や不眠といった症状が現れることもあります。まるで常に危険が迫っているかのように、心と体が緊張し続けている状態です。
これらの症状は、つらい出来事の直後に現れることもあれば、数か月、数年後に現れることもあります。症状の現れ方や強さは人それぞれで、必ずしもすべての症状が現れるわけではありません。もしも似たような症状に悩んでいる場合は、一人で抱え込まず、専門家に相談することが大切です。適切な支援を受けることで、症状の改善や回復への道が開けるでしょう。
| PTSDの症状の種類 | 説明 | 具体的な例 |
|---|---|---|
| 再体験症状 | 過去のつらい出来事をまるで今まさに体験しているかのように感じる | フラッシュバック、悪夢、出来事と似た場面や物事に出くわすと強い苦痛を感じる |
| 回避症状 | つらい記憶を思い出させないようにする | 過去の出来事を思い出させる場所や人、状況を避ける、出来事に関する記憶や感情を無理に抑え込む、周囲の人や出来事への関心が薄れる |
| 過覚醒症状 | 常に緊張状態にある | 少しの音にも驚きやすい、いつも不安や緊張を感じる、些細なことで怒りやすい、集中力の低下、不眠 |
心的外傷後ストレス障害への対処法

心の傷、すなわち心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、大きな衝撃を受けた後に起こる心の病気です。自然災害や事故、犯罪被害といった強い恐怖や無力感を伴う出来事を経験すると、誰でも心の傷を負う可能性があります。しかし、多くの人は時間の経過とともに自然に回復していきます。一方で、PTSDを発症した人は、当時の記憶や感情が繰り返し蘇り、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
PTSDの治療には、精神科の医師や臨床心理士といった心の専門家による支えが欠かせません。治療の中心となるのは、心理療法と呼ばれる心のケアです。代表的な方法として、安全な場所で過去のつらい経験を語り直すことで、記憶の整理を助ける外傷中心の心理療法があります。また、不安や恐怖を感じる場面に少しずつ慣れていくことで、症状の改善を目指す暴露療法も有効です。さらに、日常生活で役立つ心の持ち方や行動の仕方を学ぶ認知行動療法も取り入れられます。これらの心理療法に加えて、症状に合わせて薬による治療を行う場合もあります。PTSDの症状や状態は人それぞれ異なるため、自分に合った治療法を見つけることが回復への第一歩となります。
PTSDからの回復には、周囲の理解と支えも大きな力になります。家族や友人は、PTSDについて正しい知識を身につけ、患者が安心して気持ちを話せる雰囲気作りを心がけることが大切です。焦らず、じっくりと回復を見守る姿勢が、患者にとって大きな支えとなるでしょう。つらい経験を乗り越え、穏やかな日々を取り戻せるよう、専門家による適切な治療と周囲の温かいサポートが重要です。
| PTSDとは | 強い恐怖や無力感を伴う出来事を経験した後に起こる心の病気 |
|---|---|
| 症状 | 当時の記憶や感情が繰り返し蘇り、日常生活に大きな支障をきたす |
| 治療 |
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| 回復のために |
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心的外傷後ストレス障害と社会の関わり

心の傷、すなわち心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、個人の問題にとどまらず、社会全体で向き合うべき課題です。思いもよらない災害や恐ろしい犯罪といった、PTSDのきっかけとなる出来事は、誰の身にも起こりうる可能性があるからです。そのため、PTSDに対する社会全体の認識を深め、支える仕組みをきちんと整えることが大切です。PTSDを抱える人が安心して暮らせる社会を実現するには、職場や学校、地域社会など、様々な場所でPTSDへの配慮が欠かせません。たとえば、職場で急に大きな音がした際に、同僚が驚き怯える様子を見せたとしても、それは過去のつらい経験による反応かもしれません。周りの人がPTSDについて理解していれば、温かく見守ったり、必要な支援を提案したりできるでしょう。また、PTSDは、発症を防ぐための取り組みも重要です。つらい経験をした直後から、適切な世話をする体制を築くことで、PTSDになる危険性を減らせる可能性があります。具体的には、専門家によるカウンセリングや、周りの人からの心の支えなどが挙げられます。心の傷を負った人が、一人で抱え込まずに、誰かに相談できる環境を作ることも大切です。相談しやすい雰囲気作りや、相談窓口の設置、支援団体の活動促進などを通して、早期に専門家の支援を受けられるようにすることが重要です。PTSDは、適切な対応によって回復できる病気です。社会全体がPTSDについて正しく理解し、支え合うことで、心の傷を負った人が安心して暮らせる、温かい社会を築くことができるはずです。一人ひとりができることから始め、PTSDへの理解を広げていく努力が求められています。
| 問題 | 解決策 |
|---|---|
| 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、個人的な問題だけでなく、社会全体の問題。 | 社会全体のPTSDへの認識を深め、支援体制を整える。 |
| PTSDは誰にでも起こりうる。 | 職場、学校、地域社会など、様々な場所でPTSDへの配慮が必要。 |
| PTSD患者への配慮不足 | 周囲の理解と温かい見守り、必要な支援の提案。 |
| PTSDの発症 | つらい経験直後からの適切なケア(カウンセリング、周囲の心の支えなど)と相談しやすい環境づくり。 |
| PTSDへの理解不足 | 社会全体でPTSDを理解し、支え合うことで、温かい社会を築く。 |
まとめ

つらい経験の後、心に深い傷を負うことがあります。これは心的外傷後ストレス障害、いわゆるPTSDと呼ばれるものです。PTSDは、自然災害や事故、犯罪、虐待といった非常に恐ろしい出来事を経験したり、目撃したりした後に起こる精神的な病気です。突然の出来事の後、しばらくたってから症状が現れることもあります。
PTSDの症状は人それぞれですが、大きく分けて次の三つの種類があります。一つ目は、何度も恐ろしい出来事を思い出してしまうことです。まるで映画の巻き戻しのように、その時の光景や音、においなどが鮮明によみがえり、強い不安や恐怖に襲われます。悪夢にうなされることもあります。二つ目は、出来事と似た状況や場所を避けるようになることです。例えば、交通事故にあった人がその後、車に乗ることを怖がるようになる、といったことです。三つ目は、常に緊張した状態が続くことです。ちょっとした物音にも驚きやすくなったり、イライラしやすくなったり、集中力が低下したりします。眠れない、という人も多くいます。
これらの症状が日常生活に支障をきたすようになったら、専門家に相談することが大切です。PTSDは、適切な治療と支援によって回復できる病気です。一人で悩みを抱え込まずに、周りの人に助けを求めましょう。話すことで気持ちが楽になることもあります。医師やカウンセラーは、あなたの気持ちを丁寧に聴き、適切な助言や治療法を提案してくれます。薬による治療や、トラウマとなった出来事について少しずつ話すことで、症状を和らげていく方法などがあります。
周りの人の理解と支えも、回復への大きな力となります。もしあなたの身近にPTSDで苦しんでいる人がいたら、まずはじっくり話を聞いてあげましょう。そして、回復への道のりは長く、つらいこともあるということを理解し、寄り添うことが大切です。焦らず、ゆっくりと、そして共に歩んでいくことが、回復への第一歩となるでしょう。相談できる窓口はたくさんありますので、自分に合った方法で、ためらわずに支援を求めてください。決して一人で抱え込まず、早期の対応が回復への近道です。

