許されない代理:無権代理の基礎知識

調査や法律を知りたい
『無権代理』って、代理する権限がない人が勝手に代理することですよね?それなら、勝手に代理された本人は何の影響もないんですか?

調査・法律研究家
その通りです。代理する権限がない人が勝手に代理したとしても、代理された本人に法律上の影響を与えることはありません。例えば、AさんがBさんの代理だと勝手に名乗り、Cさんと契約を結んだとしても、Bさんはその契約に縛られません。

調査や法律を知りたい
なるほど。じゃあ、もしAさんが勝手に代理して、Cさんに損害を与えてしまったらどうなるんですか?

調査・法律研究家
良い質問ですね。その場合、勝手に代理したAさん(無権代理人)がCさんに対して損害賠償責任を負うことになります。Bさんは責任を負いません。
無権代理とは。
代理をする権利がないのに、かってに代理をすることを「無権代理」といいます。無権代理は、代理をする権利がないので、かってに代理された人には法的効力はありません。一方で、無権代理をした人は、場合によっては損害賠償などの責任を負うことがあります。
無権代理とは

「無権代理」とは、他人の代わりに何かをする権利をもらっていないのに、あたかも権利があるかのように装って、他人の名前を使って契約などの行為をすることです。簡単に言うと、頼まれてもいないのに、勝手に他人の名前を使って物事を決めてしまうことです。他人の代わりに何かをする行為には、きちんと頼まれて行う「有権代理」と、この無権代理の二種類があります。「有権代理」は、例えば「委任契約」のように、本人からきちんと頼まれている場合です。一方、無権代理の場合、本人は何も頼んでいないので、無権代理人が勝手に何かを決めても、本来は本人に責任はありません。
例えば、山田さんが田中さんの代理人だと偽って、佐藤さんと契約を結んだとします。この場合、田中さんは山田さんと佐藤さんの契約に縛られることはありません。山田さんと佐藤さんが勝手に契約を結んだだけで、田中さんには全く関係ないということです。
しかし、無権代理は決して許される行為ではありません。無権代理によって誰かが損をした場合、無権代理をした人は責任を負わなければなりません。例えば、先ほどの例で、佐藤さんが山田さんを田中さんの代理人だと信じて契約を結び、損害を被ったとします。この場合、山田さんは佐藤さんに対して損害賠償責任を負うことになります。また、無権代理は、場合によっては詐欺罪などの犯罪行為にあたる可能性もあります。そのため、他人の名前を使って何かをする場合には、必ず本人の許可を得ることが重要です。勝手に代理行為を行うと、大きな問題に発展する可能性があるので、注意が必要です。
| 代理の種類 | 説明 | 本人の責任 | 代理人の責任 |
|---|---|---|---|
| 有権代理 | 本人から依頼を受けて代理行為を行う。例:委任契約 | あり | 代理行為に責任を持つ |
| 無権代理 | 本人の許可なく代理行為を行う。 | なし(ただし、表見代理等の例外あり) | 損害賠償責任、場合によっては刑事責任 |
無権代理の責任

他人の名義を使って勝手に契約などを結ぶ行為を無権代理といいます。このような行為をした者を無権代理人といい、無権代理人が相手方に損害を与えた場合は、損害賠償責任を負うことになります。
例えば、AさんがBさんの代理人であると偽って、Cさんと契約を結んだとします。BさんはAさんに代理権を与えていないため、これは無権代理にあたります。この場合、CさんはBさんと契約できると信じていたにもかかわらず、実際には契約は無効なので、Cさんは損害を被る可能性があります。例えば、Cさんが契約のために準備していた費用や、契約によって得られるはずだった利益などが損害にあたります。AさんはCさんに対して、これらの損害を賠償する責任を負うことになります。
無権代理人が損害賠償責任を負うかどうかは、その代理人が善意か悪意かとは関係ありません。AさんがBさんの代理人だと本当に信じていたとしても、実際には代理権がなければ、損害賠償責任を負う可能性があります。つまり、知らなかったでは済まされないということです。
さらに、無権代理は状況によっては詐欺罪などの犯罪行為にあたる可能性もあります。特に、他人を騙すつもりで無権代理を行った場合、重い刑事罰が科される可能性があります。例えば、AさんがBさんの代理人ではないことを知りながら、Bさんの名前を使ってCさんと契約を結び、Cさんから金銭を騙し取った場合、詐欺罪が成立する可能性があります。
このように、無権代理は民事上の責任だけでなく、刑事上の責任も問われる可能性のある重大な行為です。他人の名義を使う際は、必ず本人に確認し、適切な手続きを踏むようにしましょう。安易な気持ちで無権代理を行うと、思わぬ大きな責任を負うことになるので注意が必要です。
| 行為 | 内容 | 責任 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 無権代理 | 他人の名義を使って勝手に契約などを結ぶ行為 |
|
|
| 例 | AさんがBさんの代理人であると偽って、Cさんと契約を結んだ場合。 | AさんはCさんに対して損害賠償責任を負う。 | 知らなかったでは済まされない。 |
表見代理との関係

代理人が本来持つ権限がないにも関わらず、代理行為を行うことを「無権代理」と言います。無権代理とよく似た概念に「表見代理」があります。この二つの違いを理解することは、民法上の代理制度を理解する上で非常に重要です。
無権代理とは、名前の通り代理権を持たない者が代理人として行為を行うことです。例えば、会社の社員が、会社の許可なく、会社の代理として契約を結ぶといった場合が該当します。このような場合、原則として会社(本人)はその契約に縛られません。契約は無効であり、会社には何の責任も生じません。責任を負うのは、無権限で代理行為を行った社員自身となります。
一方、表見代理とは、代理権がないにも関わらず、あたかも代理権があるかのように相手方を信じ込ませて行った代理行為のことです。そして、一定の条件を満たせば、本人にその効果が及ぶという点が、無権代理とは大きく異なります。つまり、代理権がないにも関わらず、本人が責任を負うことになるのです。
では、どのような条件を満たせば表見代理が成立するのでしょうか。まず、相手方が代理人の代理権を本当に信じていたということが必要です。単に代理権があるかもしれないと疑っていただけでは足りません。そして、相手方が代理権の存在を信じたことに過失がないことも重要です。例えば、少し調べれば代理権がないことが簡単に分かったにも関わらず、それを怠っていたというような場合には、表見代理は成立しません。最後に、本人(代理人と誤解されるような行為をした者)に何らかの落ち度がなければなりません。例えば、過去にその代理人に代理権を与えていたことがあり、相手方がそれを知っていた場合などが該当します。
これらの要件が全て満たされる場合にのみ、表見代理が成立し、本人は代理行為の効果を負うことになります。もし、これらの条件のどれか一つでも欠けている場合には、表見代理は成立せず、無権代理として扱われます。つまり、本人は責任を負わず、無権代理人が全ての責任を負うことになります。
| 項目 | 無権代理 | 表見代理 |
|---|---|---|
| 代理権の有無 | なし | なし(あるように見せかけている) |
| 本人の責任 | なし(原則として) | あり(一定の条件下で) |
| 責任の所在 | 無権代理人 | 本人 |
| 成立条件 | – | 1. 相手方が代理権を信じていた 2. 相手方に過失がない 3. 本人に何らかの落ち度がある |
追認による事後的な是正

代理人による権限のない行為、いわゆる無権代理行為は、後から本人が承認することで、最初から代理の権限があった場合と同じ効力が生じます。この承認のことを、法律用語で「追認」と言います。追認は、無権代理で行われた行為に対し、本人が事後的に同意することを意味します。
追認の方法はいくつかあります。はっきりと「認めます」と伝える明示的な方法もあれば、言葉ではなく行動で示す黙示的な方法もあります。例えば、本人が無権代理で結ばれた契約によって利益を得ていた場合、言葉で伝えなくても、追認があったと判断されることがあります。
この追認によって、無権代理行為は有効な代理行為へと変わり、本人はその結果につき責任を負うことになります。それと同時に、無権代理で行動した人は責任を免れることになります。つまり、追認によって、本人が代理人の行為を自分の行為としたことになり、すべての責任は本人が負うことになります。
ただし、追認するためには、本人が無権代理という事実を知らなければなりません。知らずに追認することはできません。また、相手方がすでに契約を解除している場合などは、追認することはできません。追認できるかどうかは、状況によって変わるため、専門家への相談が必要な場合もあります。無権代理行為の追認は、事後の承認とはいえ、本人に大きな影響を与えるため、慎重に判断する必要があります。
無権代理を防ぐために

代理による行為は、現代社会において広く行われており、商取引をはじめ様々な場面で見られます。しかし、代理には「無権代理」という大きな危険が潜んでいます。無権代理とは、代理権を持たない者が代理人として行為をすること、あるいは代理権を持つ者がその権限を超えて行為をすることを指します。このような無権代理は、本人、代理人、そして相手方の全てにとって、思わぬ損害を引き起こす可能性があります。無権代理によるトラブルを避けるためには、本人、代理人、相手方のそれぞれが注意深く行動することが重要です。
まず、本人は、代理権を与える際に、その範囲を明確に定める必要があります。口頭で伝えるだけではなく、契約書などの書面に残すことで、後々のトラブルを防止できます。代理権の範囲が曖昧なままでは、代理人が権限を超えて行為をしてしまう可能性が高まります。また、代理人が権限を逸脱する可能性を予見できる場合は、相手方に事前にその旨を伝えておくことも有効な手段です。
次に、代理人は、常に自分が代理権を持っているか、そしてその範囲はどこまでかを正確に把握しておく必要があります。代理権の範囲を理解していないまま行動することは、無権代理となる危険性を高めます。代理権がないにもかかわらず代理行為を行った場合、代理人は相手方に対して責任を負う可能性があります。そのため、代理人は自分が行う行為が代理権の範囲内であるかを慎重に確認する必要があります。
最後に、相手方も、契約を結ぶ際には、相手方が本当に代理権を持っているかを確認する義務があります。特に高額な取引や重要な契約の場合は、本人へ直接確認することが重要です。代理人と本人との関係性や、提示された委任状の内容をよく確認することで、無権代理による被害を防ぐことができます。登記簿謄本や印鑑証明書など、客観的な証拠を確認することも有効です。これらの点に注意することで、無権代理のリスクを減らし、安全な取引を行うことができます。
| 立場 | 無権代理対策 |
|---|---|
| 本人 |
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| 代理人 |
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| 相手方 |
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