法律行為の追認:事後承諾の法的効果
調査や法律を知りたい
『追認』って、よく聞く言葉ですが、法律用語としてはどういう意味ですか?
調査・法律研究家
簡単に言うと、後から考えてみて、先にやった行為を有効なものとして認めることを『追認』と言います。例えば、本来は認められない行為だったとしても、後から関係者が『やっぱりこれでいいよ』と認めれば、その行為は有効になる、ということです。
調査や法律を知りたい
なるほど。どんな時に『追認』が必要になるんですか?
調査・法律研究家
いくつか例がありますが、民法では、無効になる可能性のある行為や、代理人が権限を持たずにやった行為などを、後から有効にするために『追認』を使うことがあります。例えば、未成年者が契約した場合、親が後からその契約を認めることで有効になる、といったケースですね。
追認とは。
すでに起こった法律に関する行為を、あとから有効なことにすることを「追認」といいます。法律では、三つの種類の追認について定められています。一つ目は、取り消しできる法律行為の追認です。二つ目は、代理権がない人が行った行為の追認です。三つ目は、はじめから無効な行為の追認です。
はじめに
人が社会生活を送る上で、様々な約束事を交わしますが、法的に効力を持つ約束事を法律行為と言います。例えば、お店で物を買う、家を借りるといった行為も法律行為にあたります。これは当事者間で権利や義務が発生するからです。お店で物を買う行為であれば、買った人はお金を払う義務、お店の人は物を渡す義務が発生します。家を借りる行為であれば、借りる人は家賃を払う義務、貸す人は家を貸し出す義務が発生します。これらの法律行為は、当事者の自由な意思に基づいて行われることが原則です。
しかし、自由な意思に基づいて行われたように見えても、実は何らかの問題がある場合があります。例えば、未成年者が親の同意を得ずに高額な買い物をしたり、勘違いやだまされて契約を結んでしまったりする場合です。また、代理人に頼んだ行為が、実は代理権の範囲を超えていた、という場合も考えられます。このような場合、法律行為自体に問題があるため、無効となってしまう可能性があります。無効になると、最初からなかったものとして扱われてしまい、様々な不都合が生じる可能性があります。
このような場合に、後からその行為を有効なものとして認める制度が「追認」です。追認は、一度は無効とされた法律行為を、事後的に救済するための重要な制度です。例えば、未成年者が親の同意を得ずに高額な買い物をした場合、後から親がその行為を追認すれば、その行為は有効なものとなります。また、代理権の範囲を超えて行われた行為も、本人が後から追認すれば有効となります。追認には、明示的に行う場合と、暗黙的に行う場合があります。明示的な追認は、言葉や書面で「この行為を認めます」と伝えることです。暗黙的な追認は、行為によって追認の意思表示を行うことです。例えば、代理権の範囲を超えて代理人が契約を結んだ後、本人がその契約に基づいて商品を受け取ったり、代金を支払ったりした場合、暗黙的に追認したものとみなされます。追認によって、無効であった法律行為は、最初から有効であったものとして扱われます。そのため、追認は、当事者間の権利義務関係を明確にし、紛争を未然に防ぐ上で重要な役割を果たしています。
取り消せる行為の追認
ある行為をした後で、実はその行為は最初から無効にできたと判明する、という場合があります。例えば、相手から騙されたり、脅されたりして何か契約を結んでしまった場合などです。このような、後から無効にすることができる行為のことを「取り消せる行為」と言います。
取り消せる行為は、そのままにしておけば宙ぶらりんの状態、つまり効力が確定していない状態です。もし、後でやっぱりこの契約は有効なままにしておきたい、と考えた場合はどうすれば良いでしょうか。このような場合に、「追認」という手続きを行うことができます。追認とは、取り消せる状態の行為を、自分の意思で有効なものとして確定させることです。追認を行うと、最初からその行為は有効だったものと見なされ、後から取り消すことはできなくなります。
例えば、騙されて土地を売ってしまったとします。売った後で、やはり土地を手放したくないと思ったとしましょう。この時、売買契約を取り消すことができます。しかし、もし売却した金額に納得していたり、他に事情があって売買契約を有効にしたい場合は、追認を行うことができます。追認することで、売買契約は最初から有効だったものとされ、後から「やっぱり騙されていたから売買契約を取り消したい」と言うことができなくなります。
このように、追認は不安定な状態の法律関係を安定させる効果があります。一度追認してしまうと、もうその行為を取り消すことはできません。ですから、追認を行うかどうかは慎重に判断する必要があります。追認によって、当事者間の権利義務関係は確定し、後々の紛争を避けることができます。これは、円滑な社会生活を送る上で非常に重要です。追認は、取引の安全性を確保し、社会全体の秩序を守る役割を果たしていると言えるでしょう。
無権代理の追認
ある人が、他の人から頼まれたことを代わりにやってあげることを代理と言います。例えば、友達に頼まれて買い物をしたり、仕事で上司の代わりに書類にサインをすることなどが代理に当たります。この頼まれた人のことを本人、代わりにやる人のことを代理人と呼びます。代理人は、本人に頼まれたことだけを行うことができます。もし、頼まれていないことや、頼まれた範囲を超えたことをした場合、それは無権代理行為となります。
例えば、友達に「1000円以内でリンゴを買ってきて」と頼まれたとします。この場合、本人は友達、代理人はリンゴを買ってくるあなたです。あなたは1000円以内でリンゴを買うことだけが認められています。もし、頼まれていないバナナを買ってきたり、1500円のリンゴを買ってきたりした場合は、無権代理行為になってしまいます。
無権代理行為は、本人が後から認めない限り、本人には効力がありません。つまり、1500円のリンゴを買ってきた場合、友達は「頼んでいないからお金は払わない」と言うことができます。しかし、本人が「高いけど、まあいいか」と後から認めた場合は、その行為は最初から有効だったとみなされます。これを追認と言います。この場合、友達は1500円を支払わなければなりません。
追認は、代理人と相手方の間の信頼関係を守り、物事がスムーズに進むようにするために重要な役割を果たします。もし、追認という制度がなければ、相手方は常に代理人が本当に本人に頼まれているのかを疑わなければならず、安心して取引することができません。追認によって、代理人と相手方の両方が安心して取引を行うことができるのです。
無効な行為の追認
法律に反したり、社会の秩序や道徳に反する行為は無効とされ、後から認めても効力を持つことはありません。これは、私たちの社会のルールを守るためにとても大切な考え方です。無効な行為とは、そもそも法律上の手続きや内容に問題があり、最初から効き目がない行為のことを指します。例えば、法律で禁じられている目的のための契約や、道徳的に許されないような取り決めなどは、無効な行為にあたります。
このような行為は、後から関係者が「やっぱりこれで良い」と同意しても、効力を持つようにはなりません。なぜなら、もしこのような行為が認められてしまうと、法律や道徳を無視した行動が横行し、社会の秩序が乱れてしまうからです。
しかし、例外的に、無効な行為が後から有効になる場合もあります。これは、法律で特別に認められている場合に限られます。例えば、会社のルールを定めた会社法では、株主総会での正式な決定がないまま行われた取締役会の決定でも、後から株主総会で承認を得れば有効になる場合があります。これは、会社の運営をスムーズに進めるための特別なルールです。
このように、無効な行為が後から有効になるかどうかは、法律によって細かく決められています。一般的には、無効な行為は後から認めても効力がないとされていますが、法律で特別に認められた場合には例外的に有効になることがあります。これは、社会の秩序を維持しつつ、特定の状況における必要性にも対応するための工夫といえます。
行為の有効性 | 原則 | 例外 | 根拠 |
---|---|---|---|
無効な行為 | 後から同意しても効力なし | 法律で規定された場合、後から有効になる場合あり | 社会の秩序維持 |
例 | 違法な契約、非道徳的な取り決め | 会社法における株主総会での事後承認 | 特定状況への対応 |
追認の方法と効果
無権代理とは、代理権がないにも関わらず、代理人として契約などの行為を行うことを指します。このような行為は、本来は無効ですが、後から本人が追認することで有効にすることができます。追認とは、無権代理行為を事後的に承認することを言います。追認には、明示的な方法と黙示的な方法があります。
明示的な追認とは、言葉や文書で、はっきりと追認の意思表示をすることです。例えば、「この契約を追認します」と口頭で伝えたり、書面で追認の旨を記した通知を相手方に送ったりすることで、明示的な追認となります。追認の意思表示は、相手方に対して行う必要があります。
一方、黙示的な追認とは、言葉や文書による明確な意思表示は行わないものの、追認をしたと認められるような行動をとることを指します。例えば、無権代理人が結んだ契約に基づいて、本人が相手方から品物を受け取ったり、逆に相手方に代金を支払ったりする行為は、黙示の追認とみなされます。また、無権代理人が行った行為によって得られた利益を本人がそのまま受け取っている場合も、黙示の追認とみなされることがあります。
追認の効果は非常に大きく、追認された行為は、最初から有効であったものとみなされます。つまり、無権代理人が契約を結んだ時点ではなく、本人が追認した時点に遡って、契約の効力が発生します。これにより、本人は無権代理人が結んだ契約に基づく権利や義務を負うことになります。
しかし、追認には制限があります。追認は、善意の第三者の権利を害することはできません。例えば、無権代理人がAさんの土地をBさんに売却し、その後、Aさんがこの売買契約を追認した場合、Bさんが善意の第三者であれば、AさんはBさんに対して土地の所有権を主張することはできません。このように、追認は全ての場合に有効となるわけではなく、状況によっては第三者の権利が優先されることを理解しておく必要があります。
まとめ
さかのぼって効き目を持つように認めること、つまり追認は、法律行為の効き目を事後的に補う大切な仕組みです。たとえば、ある行為を取り消せる場合や、代理権のない人が代理行為をした場合でも、追認することで、法律関係を安定させ、取引の安全を守ることができます。
取り消せる行為というのは、たとえば、未成年者が保護者の同意を得ずに契約を結んだ場合などです。このような場合、未成年者本人または保護者が後からその契約を認めることで、契約は有効になります。また、代理権のない人が代理行為をした場合、本来であればその行為は無効ですが、本人が後からその行為を認めることで、有効な行為となります。このように、追認は、不安定な法律関係を事後的に安定させる機能を持っています。
しかし、はじめから効き目がない行為、つまり無効な行為については、追認することはできません。たとえば、公序良俗に反する契約は無効であり、後から追認しようとしても、効き目を持つようにはなりません。これは、社会の秩序や道徳を守るためです。
追認できるかどうか、また追認した場合にどのような効き目が生じるかは、それぞれの状況によって慎重に判断する必要があります。たとえば、追認するかどうかによって、当事者の権利義務が大きく変わる可能性があります。そのため、追認する前に、専門家によく相談し、適切な判断をすることが大切です。
追認という制度を正しく理解し、うまく活用することで、無駄な争いを避け、円滑な取引を行うことができるでしょう。もし法律行為に問題が生じた場合は、ためらわずに専門家に相談することをお勧めします。専門家は、具体的な状況に応じて、適切なアドバイスを提供してくれます。追認は、法律関係を安定させ、取引の安全を確保するための重要な制度です。正しく理解し、活用することで、より良い法的効果を得ることができるでしょう。
行為 | 追認 | 効力 | 例 |
---|---|---|---|
取り消せる行為 | 可能 | 事後的に有効 | 未成年者の契約、無権代理行為 |
無効な行為 | 不可能 | 無効のまま | 公序良俗に反する契約 |