違約手付:契約破裂の代償

調査や法律を知りたい
『違約手付』って、よく聞くけど、普通の『手付』と何が違うんですか?

調査・法律研究家
いい質問ですね。普通の『手付』は、契約成立の証拠や、将来の支払いに充てるためのお金です。一方、『違約手付』は、契約を破った時の罰金のような役割も持っています。

調査や法律を知りたい
つまり、違約手付を払った人が約束を守らなかったら、お金は返ってこないってことですか?

調査・法律研究家
その通りです。契約を守るための担保のようなものなので、約束を破ると没収されてしまいます。逆に、手付を受け取った側が約束を破った場合は、受け取った手付の倍額を支払わなければならないんですよ。
違約手付とは。
約束を破った場合の罰金のようなものとして『手付金』があります。この手付金の中でも、約束を破った人が支払ったお金を受け取った人がそのままもらってしまうことができるものを『違約手付』と言います。これは、約束をちゃんと守ってもらうために使われる方法です。
手付とは

「手付」とは、契約を結ぶ際、当事者の一方が相手方に支払う金銭や物品などの財産のことです。例えば、家の売買契約を結ぶ際に、買主が売主に支払うお金などがこれにあたります。この手付には、いくつかの種類がありますが、大きく分けて二つの種類があります。一つは「解約手付」、もう一つは「違約手付」です。
今回は、このうちの「違約手付」について詳しく説明します。違約手付とは、契約がしっかりと守られることを目的として支払われる手付です。もし契約当事者の一方が契約を守らなかった場合、相手方は受け取った手付を自分のものにすることができます。
具体的な例を挙げてみましょう。家の売買契約で、買主が売主に手付金を支払ったとします。その後、買主が家の代金である残金を支払わなかった場合、売主は受け取った手付金を自分のものにし、契約をなかったことにすることができます。このように、違約手付は契約を守ることを促す、一種の担保のような役割を果たします。
しかし、手付の金額があまりにも高額な場合は、社会の常識から外れたものとして無効になる可能性があります。例えば、安い品物の売買契約で、品物の値段よりもはるかに高い手付を設定することは、一般的には認められません。
また、違約手付は、契約当事者同士が合意すれば設定できますが、法律で必ず設定しなければならないものではありません。契約の内容や当事者の考え方に合わせて、柔軟に決めることができます。例えば、当事者同士が信頼関係で結ばれていて、契約が守られる確信がある場合には、違約手付を設定しないこともあります。逆に、高額な取引や重要な契約の場合には、違約手付を設定することで、契約履行の確実性を高めることができます。
| 手付の種類 | 説明 | 効果 | その他 |
|---|---|---|---|
| 違約手付 | 契約が守られることを目的として支払われる。 | 契約不履行の場合、相手方は手付を没収できる。契約履行を促す担保の役割。 | 金額が高額すぎる場合は無効になる可能性あり。 設定は任意。 |
違約手付の機能

約束事を守ってもらうためのお金、違約手付には、大きく分けて二つの役割があります。一つは、契約をきちんと果たすことを確実にすることです。お金を渡した側は、そのお金を失いたくないので、約束を守ろうとします。お金を受け取った側も、約束が守られればお金をもらえるので、相手が約束を守ることを期待できます。
もう一つの役割は、もし約束が守られなかった場合の損害をあらかじめ決めておくことです。約束が守られないと、損をしてしまうことは避けられません。違約手付は、この損害の金額を前もって決めておくことで、後々もめることを防ぎます。例えば、家を建てる仕事を引き受けた人が、約束の期日までに工事を終えられなかったとします。この時、家を建ててもらう側は、違約手付を損害のお金として受け取ることができます。そうすることで、どれだけの損害が出たか計算したり、損害を証明したりする手間を省くことができます。
ただし、注意すべき点もあります。実際に損をした金額が、あらかじめ決めておいた違約手付の金額よりも多い場合でも、追加のお金を請求することは、原則としてできません。反対に、実際に損をした金額が、違約手付の金額よりも少ない場合でも、支払ったお金を返してもらうことはできません。あらかじめ決めておいた金額で解決とするのが原則なのです。そのため、違約手付の金額を決める際には、将来発生しうる損害をしっかりと見通しておくことが大切です。

解約手付との違い

約束を破った時に支払うお金には、大きく分けて二つの種類があります。一つは「違約手付」と呼ばれるもので、もう一つは「解約手付」です。名前は似ていますが、役割が全く違いますので、注意が必要です。
違約手付はお互いの約束が守られなかった場合に発生するお金です。例えば、家を建てる契約で、工務店が工事を途中でやめてしまった場合、施主は違約手付を請求できます。反対に、施主が急に契約を破棄した場合も、工務店は違約手付を請求できます。つまり、どちらかの責任で約束が守られなかった時に、損害を受けた側が請求できるお金なのです。
一方、解約手付は契約を一方的に破棄するための手段として使われます。例えば、土地を買う契約で、買主が解約手付を支払っていたとします。もし買主が急に土地を買えなくなった場合、支払った解約手付を放棄することで、契約を解除できます。反対に、売主が契約を解除したければ、受け取った解約手付の二倍の金額を買主に支払う必要があります。つまり、解約手付は契約を解除するための対価として機能するのです。
このように、違約手付と解約手付は全く異なる目的で使われます。違約手付は約束を守らなかった場合の損害賠償としての役割を持ち、解約手付は契約を解除する権利を得るためのお金です。どちらの手付を使うかは、契約の内容や状況によって慎重に決める必要があります。約束を確実に守ってほしい場合は違約手付を、将来何らかの事情で契約を解除する可能性がある場合は解約手付を選択するのが良いでしょう。
| 項目 | 違約手付 | 解約手付 |
|---|---|---|
| 目的 | 損害賠償 | 契約解除 |
| 発生条件 | 約束不履行時 | 一方的な契約破棄時 |
| 請求者 | 損害を受けた側 | ー |
| 金額 | 損害額相当 | 予め設定した金額 |
| その他 | 双方向に請求可能 | 解除する側が支払う(または放棄する) |
| 例 | 工務店が工事を途中でやめた場合、施主は違約手付を請求できる。施主が急に契約を破棄した場合、工務店は違約手付を請求できる。 | 買主が土地の購入契約を解除するために、解約手付を放棄する。売主が契約を解除するために、受け取った解約手付の二倍の金額を買主に支払う。 |
違約手付をめぐる問題点

約束を破った際に支払う違約金、いわゆる違約手付。これは、契約を確実に履行させるための有効な手段として広く使われています。しかしながら、この便利な制度にもいくつかの問題点が潜んでいます。
まず、違約金の金額が行き過ぎている場合、社会通念上、道理に合わないと判断され、無効となる可能性があります。例えば、軽微な約束違反に対して、過度に高額な違約金を設定することは、相手に不当な負担を強いることになりかねません。裁判所は、契約の内容や当事者の財力などを総合的に見て、違約金の金額が適正かどうかを判断します。あまりに高額な違約金は、契約のバランスを崩し、公平性を欠くものとみなされるのです。
次に、違約手付は、損害賠償額をあらかじめ決めておくという役割も持っています。そのため、実際に発生した損害額と違約金の金額が大きく食い違っている場合でも、追加で損害賠償を請求したり、違約金を返してもらったりすることが原則としてできません。これは、損害額を計算したり、証拠を集めたりする手間を省くというメリットの裏返しではありますが、現実の損害と乖離した違約金が支払われることで、不公平が生じる可能性も否定できません。ただし、違約金の金額が実際の損害に比べて極端に高額な場合は、例外的に金額を減らす請求が認められることもあります。
このように、違約手付は便利な制度である一方、金額設定によっては思わぬトラブルに発展する可能性も秘めています。契約を交わす際には、違約金の金額が適正かどうか、将来発生しうる損害額とのバランスを考えて、慎重に検討することが大切です。
| 違約手付の問題点 | 詳細 | 補足 |
|---|---|---|
| 違約金の金額が過大 | 軽微な約束違反に対し高額な違約金を設定すると、相手に不当な負担を強いる可能性があり、無効となる場合も。 | 裁判所は契約の内容や当事者の財力などを総合的に判断。 |
| 損害賠償額との乖離 | 違約手付は損害賠償額の予定となるため、実際の損害額と違約金の金額が大きく異なっていても、追加請求や返金が原則不可。 | 損害額の計算や証拠集めの手間を省くメリットの裏返しだが、不公平が生じる可能性も。ただし、違約金が実際の損害に比べて極端に高額な場合は減額請求が認められることも。 |
| 将来の損害とのバランス | 契約締結時に違約金の金額が適正か、将来発生しうる損害額とのバランスを考慮した慎重な検討が必要。 |
まとめ

約束をきちんと守ってもらうためにお金を払う、違約手付。これは、契約を守る気持ちを示す大切なものです。しかし、使い方を間違えると、思わぬ問題が起こることもあります。そこで、違約手付の大切な点と、注意すべきことをまとめました。
まず、違約手付は契約を破った時に支払うお金です。例えば、家を建てる約束をしたのに、一方的にやめると決めた場合、違約手付を払うことになります。これは、約束を破ることによる損害をあらかじめ決めておくという意味があります。
次に、違約手付と似た言葉に解約手付というものがあります。こちらは、契約をやめる権利をお金で買うという意味です。例えば、土地を買う約束をしたけれど、やっぱりやめたいと思った場合、解約手付を払えば、契約をやめることができます。違約手付と解約手付は似ていますが、目的が全く違うので、注意が必要です。
違約手付を使う際には、金額を慎重に決める必要があります。あまりに高額な違約手付は、法律で認められない場合があります。また、実際に損害が出た場合、違約手付と損害額を比べて、どちらか低い金額が支払われます。
契約書に違約手付について書くときは、内容をよく確認することが大切です。難しい言葉や分かりにくい表現があると、後でトラブルになる可能性があります。分からないことがあれば、法律の専門家に相談することをお勧めします。
違約手付は、正しく使えば、取引を安全に進めるための役に立つものです。契約に関わる人たちが、それぞれの権利と義務をきちんと理解し、責任を持って行動することが、信頼できる取引につながります。
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 違約手付の定義 | 約束を破った時に支払うお金。契約を守る気持ちを示す大切なもの。契約を破ることによる損害をあらかじめ決めておくという意味を持つ。 |
| 違約手付の例 | 家を建てる約束をしたのに、一方的にやめると決めた場合、違約手付を払う。 |
| 解約手付との違い | 解約手付は契約をやめる権利をお金で買うもの。違約手付と解約手付は目的が全く違う。 |
| 解約手付の例 | 土地を買う約束をしたけれど、やっぱりやめたいと思った場合、解約手付を払えば、契約をやめることができる。 |
| 違約手付の金額設定 | 金額を慎重に決める必要がある。高額な違約手付は、法律で認められない場合がある。実際に損害が出た場合、違約手付と損害額を比べて、どちらか低い金額が支払われる。 |
| 契約書の確認 | 契約書に違約手付について書くときは、内容をよく確認する。分からないことがあれば、法律の専門家に相談する。 |
| 違約手付のメリット | 正しく使えば、取引を安全に進めるための役に立つ。 |
| 契約当事者の責任 | 契約に関わる人たちが、それぞれの権利と義務をきちんと理解し、責任を持って行動することが、信頼できる取引につながる。 |
