調停不要?甲類事件の深層

調査や法律を知りたい
『甲類事件』って、家庭裁判所で扱うんですよね?どんな事件のことですか?

調査・法律研究家
そうだね。家庭裁判所で扱う事件の一つだ。簡単に言うと、家族に関することで、争いはないけれど、みんなにとって大切なことだから、裁判所の許可が必要な手続きのことだよ。

調査や法律を知りたい
争いはないのに、裁判所が必要なんですか?具体的にどんな事件がありますか?

調査・法律研究家
例えば、成年後見人を決める手続きや、行方不明の人を法律的にいなくなったことにする手続き、養子縁組の許可などだね。大事な手続きだから、裁判所が内容を確認して許可するんだよ。
甲類事件とは。
家庭裁判所で扱う事件のうち、『甲類事件』というものがあります。これは、家事事件の中でも、話し合いで解決を図る『調停』の対象にならない事件のことです。甲類事件は、当事者間で争いがあるわけではありませんが、社会全体の利益に関わるため、当事者だけで自由に決めて良いものではありません。しかし、話し合いで解決する性質のものでもないため、調停は行われません。具体的には、例えば、成年後見人の選任、行方不明者の失踪宣告、子どもの名字の変更許可、養子縁組の許可、亡くなった後での離婚の許可、相続放棄の受け付け、遺言執行者の選任、氏名変更の許可などが甲類事件にあたります。
はじめに

家庭のもめごとを解決する場として、家庭裁判所があります。家庭裁判所には様々な手続きがありますが、話し合いによって解決を目指す方法を調停といいます。しかし、家庭裁判所のすべての手続きが調停で解決できるわけではありません。今回紹介する甲類事件は、調停では解決できない種類の手続きです。一体どのような事件が甲類事件にあたり、どのような手続きで解決するのか、詳しく見ていきましょう。
まず、家庭裁判所で扱う事件は、大きく分けて甲類、乙類、丙類の三種類に分けられます。このうち、甲類事件は、主に身分関係に関する争いを扱います。具体的には、離婚、親子関係の不存在確認、離縁などです。夫婦の関係や親子関係といった、個人の身分に関わる重要な問題を解決するための手続きです。これらの事件は、当事者間の合意だけで解決できないという性質を持っています。例えば、離婚の場合、たとえ夫婦間で離婚に合意していたとしても、家庭裁判所の審判が必要です。また、子どもがいる場合には、親権者を決めたり、養育費の額などを定める必要があり、これも裁判所の判断が必要です。
甲類事件の手続きは、まず申立書を家庭裁判所に提出することから始まります。申立書には、事件の内容や請求する事項などを具体的に記載する必要があります。その後、裁判所による調査や審問が行われます。審問では、当事者双方が自分の主張を述べ、証拠を提出します。裁判所は、提出された証拠や当事者の主張に基づいて、何が真実かを慎重に判断します。そして、最終的に審判を下し、事件の解決を図ります。審判の内容は、離婚の成立や親権者の指定、養育費の金額など、具体的なものになります。このように、甲類事件は、調停とは異なり、裁判所の判断によって解決される手続きです。個人の身分に関わる重要な問題だからこそ、公正な判断を下すために、厳格な手続きが定められているのです。

甲類事件の定義

家庭内の揉め事を解決するための手続きである家事事件。その中でも、話し合いによる解決を目指す調停ではなく、裁判所の審判によって処理されるものを甲類事件と呼びます。甲類事件の大きな特徴は、当事者間に争いがないということです。家事事件というと、離婚や相続のように、争っているイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、甲類事件はそれとは異なり、ある状態を法的に確定させる、もしくは許可を得るために裁判所の手続きが必要となるものです。
具体例を挙げると、判断能力が不十分な方のために財産管理などを行う成年後見の開始手続きが挙げられます。これは、誰かと争っているわけではなく、本人の保護を目的とした制度です。また、行方が分からなくなってしまった人の財産を管理するために必要な失踪宣告も甲類事件に該当します。これも、行方不明者と争いがあるわけではなく、残された家族の生活や財産を守るための制度です。他にも、不在者の財産管理人の選任や、相続財産管理人の選任なども甲類事件です。これらは、当事者間で争っているというよりも、一定の事柄について法的な処理をする必要がある場合に利用されます。
このように、甲類事件は争いごとの解決ではなく、現状を法的に整えるための手続きと言えるでしょう。家庭裁判所では、このような甲類事件を通じて、円滑な社会生活を送れるよう支援しています。複雑な人間関係や財産問題を扱うことも多く、専門的な知識が必要とされる分野です。
| 甲類事件の概要 | 説明 | 具体例 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 定義 | 家事事件のうち、裁判所の審判によって処理されるもの。当事者間に争いがないことが特徴。 | 成年後見開始、失踪宣告、不在者財産管理人選任、相続財産管理人選任など | ある状態を法的に確定させる、もしくは許可を得る |
| 特徴 | 争いごとの解決ではなく、現状を法的に整えるための手続き | 成年後見:判断能力が不十分な方の財産管理などを行う | 本人の保護、残された家族の生活や財産を守る、一定の事柄について法的な処理をする |
| 家庭裁判所の役割 | 甲類事件を通じて、円滑な社会生活を送れるよう支援 | 失踪宣告:行方が分からなくなってしまった人の財産を管理 | – |
| 必要性 | 複雑な人間関係や財産問題を扱うため、専門的な知識が必要 | – | – |
調停不適の理由

人が忽然と姿を消し、長い間音信不通となることは、残された家族や関係者にとって大きな苦悩となります。このような場合、法律上、「失踪宣告」という制度が用意されています。失踪宣告とは、行方不明者が一定期間不在のまま連絡が取れない場合、家庭裁判所の審判によって、法律上死亡したものとみなす制度です。
この失踪宣告は、民事調停の対象となる「家事事件」の中でも「甲類事件」に分類されます。家事事件は、大きく分けて甲類と乙類に分けられ、乙類事件は当事者間の合意で解決可能なもの、例えば夫婦間の財産分与や子の養育費などです。これらは話し合いによる解決が望ましいため、調停が有効な手段となります。一方、甲類事件は、失踪宣告のように社会全体の利益、つまり公益に関わる事柄です。
失踪宣告が公益性を持つ理由を考えてみましょう。行方不明者の財産は、適切に管理されなければ、放置されたまま朽ち果ててしまうかもしれません。また、配偶者が再婚することもできず、様々な法的問題が生じかねません。失踪宣告を行うことで、不在者の財産を法的に管理できるようになり、家族の生活や法律関係を整理することができます。これは、社会秩序の維持という観点からも重要な意味を持ちます。
公益を守るためには、個人の都合や感情だけで判断することはできません。だからこそ、失踪宣告は、裁判所という公正中立な機関による厳正な審判が必要となります。当事者同士の話し合いで解決を目指す調停では、どうしても感情的な対立や一方的な主張が入り込む余地があります。そのような状況で、社会全体の利益を考慮した適切な判断を下すことは難しいでしょう。そのため、失踪宣告のような甲類事件は、調停の対象外とされているのです。公益を守るためには、厳格な手続きを経た裁判による審判こそが、より適切な方法と言えるでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 失踪宣告 | 一定期間不在で音信不通の場合、家庭裁判所の審判で法律上死亡とみなす制度 |
| 家事事件分類 | 甲類事件(失踪宣告など公益に関わる事柄) |
| 乙類事件 | 当事者間の合意で解決可能なもの(財産分与、養育費など) |
| 失踪宣告の公益性 | 不在者の財産管理、家族の生活・法律関係の整理、社会秩序の維持 |
| 失踪宣告の必要性 | 公益を守るため、裁判所による公正中立な審判が必要 |
| 調停の不適合性 | 感情的対立や一方的主張が入る余地があり、公益を考慮した判断が難しい |
具体的な事例

甲類事件は、私たちの生活に関わる様々な出来事を法的に処理するための手続きです。 これらの手続きは、個人の身分や財産、家族関係など、重要な事柄を公的に確定させる役割を担っています。そのため、裁判所が関与し、法律に基づいて厳格な審査が行われます。
既に述べたように、成年後見開始の審判や失踪宣告は代表的な甲類事件です。 成年後見開始の審判は、認知症や知的障害などにより判断能力が低下した方を保護するために、後見人を選任する手続きです。後見人は、本人に代わって財産管理や法律行為を行うことができます。失踪宣告は、行方不明者の生死が長期間不明な場合に、家庭裁判所が法律上の死亡とみなす宣告を行う手続きです。これにより、相続や再婚などの手続きが可能になります。
子の氏の変更許可も甲類事件の一つです。 親の離婚や再婚などにより、子の氏が現状にそぐわなくなってしまった場合、家庭裁判所に氏の変更を申し立てることができます。裁判所は、子の福祉を最優先に考えて許可の可否を判断します。
養子縁組の許可、死後離縁の許可も、家族関係を法的に変更するための重要な手続きです。 養子縁組は、血縁関係のない者との間に親子関係を create する制度であり、死後離縁は、死亡した配偶者との婚姻関係を解消する制度です。これらの手続きにも、法律で定められた要件を満たす必要があります。
相続放棄申述の受理、遺言執行者の選任も甲類事件に含まれます。 相続放棄は、被相続人の負債などを引き継ぎたくない場合に、相続権を放棄する手続きです。遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う役割を担います。
最後に、氏又は名の変更許可も甲類事件です。正当な理由がある場合、家庭裁判所に氏名の変更を申し立てることができます。
このように、甲類事件は多岐に渡り、私たちの生活に深く関わっています。これらの手続きは、社会秩序の維持と個人の権利保護のために重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
| 甲類事件の種類 | 内容 |
|---|---|
| 成年後見開始の審判 | 認知症や知的障害などにより判断能力が低下した方を保護するために、後見人を選任する手続き。後見人は、本人に代わって財産管理や法律行為を行う。 |
| 失踪宣告 | 行方不明者の生死が長期間不明な場合に、家庭裁判所が法律上の死亡とみなす宣告を行う手続き。相続や再婚などの手続きが可能になる。 |
| 子の氏の変更許可 | 親の離婚や再婚などにより、子の氏が現状にそぐわなくなってしまった場合、家庭裁判所に氏の変更を申し立てることができる。裁判所は、子の福祉を最優先に考えて許可の可否を判断する。 |
| 養子縁組の許可 | 血縁関係のない者との間に親子関係を create する制度。 |
| 死後離縁の許可 | 死亡した配偶者との婚姻関係を解消する制度。 |
| 相続放棄申述の受理 | 被相続人の負債などを引き継ぎたくない場合に、相続権を放棄する手続き。 |
| 遺言執行者の選任 | 遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う役割を担う者の選任。 |
| 氏又は名の変更許可 | 正当な理由がある場合、家庭裁判所に氏名の変更を申し立てることができる。 |
手続きの流れ

甲類事件の手続きは、まず家庭裁判所に申立書を提出することから始まります。この申立書には、事件の内容を具体的に説明し、どのような解決を求めるのかを明確に記載する必要があります。例えば、成年後見開始の申立てであれば、本人の氏名、住所、現在の状況、後見人が必要になった理由などを詳細に書き記します。失踪宣告の申立てであれば、失踪した人の氏名、住所、最後の目撃情報、失踪に至った経緯などを詳しく説明する必要があります。また、申立書には戸籍謄本や診断書など、申立て内容を裏付ける書類を添付しなければなりません。必要な書類は事件の種類によって異なるため、事前に裁判所に確認することが重要です。
家庭裁判所は提出された申立書の内容を慎重に審査します。申立書の記載内容が不十分な場合や、添付書類が不足している場合は、裁判所から補正を求められることがあります。また、申立内容について詳しく事情を聴取するために、裁判所が申立人や関係者を呼び出して面接を行うこともあります。例えば、成年後見開始の申立てでは、本人の意思を確認するために本人と面接したり、親族から事情を聴いたりすることがあります。失踪宣告の申立てでは、失踪した人の家族や友人、同僚などから失踪に至るまでの状況を詳しく聴き取ることがあります。
裁判所は必要に応じて調査や審問を行い、最終的に審判を下します。審判の内容は事件の種類によって大きく異なります。成年後見開始の審判では、本人の能力を考慮し、適切な後見人を選任します。場合によっては、後見人の監督を行う後見監督人を選任することもあります。失踪宣告の審判では、失踪した人が実際に失踪したと認められる場合、法律上の失踪の開始日を決定します。この開始日は、失踪者の財産管理や相続手続きにおいて重要な意味を持ちます。審判が確定すると、確定した日から効力が発生し、関係者全員を拘束します。確定した審判に不服がある場合は、一定の期間内に上級裁判所に抗告することができます。

まとめ

家庭裁判所で扱う事件の中には、話し合いによる解決が難しい「甲類事件」と呼ばれるものがあります。これは、当事者間の争いではなく、社会全体の利益を守るための手続きです。そのため、裁判所による公平で厳正な判断が必要とされます。
甲類事件は、個人の身分や財産に深く関わる重要な事柄を扱います。例えば、成年後見の開始や終了、不在宣告、財産の管理など、人生の様々な場面で必要となる手続きが含まれます。これらの手続きは、事案ごとに必要な書類や手続きの流れが異なります。例えば、成年後見開始の申立てでは、医師の診断書が必要となる場合もありますし、不在宣告の申立てでは、失踪した人の財産状況などを明らかにする必要があります。
甲類事件に直面した場合、複雑な手続きを一人で進めることは困難です。家庭裁判所には、これらの手続きを支援するための相談窓口が設けられています。また、弁護士などの法律の専門家に相談することで、具体的な手続きの流れや必要書類について、詳しい説明を受けることができます。専門家の助言を受けることで、手続きをスムーズに進めることができるだけでなく、自分自身や家族の権利を守るためにも役立ちます。どの専門家に相談すべきか迷う場合は、まずは家庭裁判所の相談窓口に問い合わせることをお勧めします。窓口では、適切な専門家を紹介してもらうことも可能です。早めの相談が、問題の早期解決と、心の負担軽減につながるでしょう。
| 甲類事件の特徴 | 具体的な内容 | 対応策 |
|---|---|---|
| 話し合いによる解決が難しい | 当事者間の争いではなく、社会全体の利益を守るための手続き | 裁判所による公平で厳正な判断が必要 |
| 個人の身分や財産に深く関わる重要な事柄を扱う | 成年後見の開始や終了、不在宣告、財産の管理など | 事案ごとに必要な書類や手続きの流れが異なる(例:成年後見開始申立てでは医師の診断書、不在宣告申立てでは失踪者の財産状況の証明など) |
| 複雑な手続きを一人で進めることは困難 | – |
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