消えた罪、姦通罪:その歴史と背景

調査や法律を知りたい
『姦通罪』って、今はもうないんですよね?どうしてなくなったんですか?

調査・法律研究家
はい、今はもうありません。以前は刑法にありましたが、廃止されました。大きな理由は、男女の不平等があったからです。

調査や法律を知りたい
男女の不平等というと、どういうことですか?

調査・法律研究家
結婚している女性が、他の男性と性的な関係を持った場合、女性と相手の男性が罰せられました。しかし、結婚している男性が他の女性と性的な関係を持った場合でも、男性は罰せられませんでした。女性だけが罰せられるのはおかしいという声が多く上がり、廃止につながったのです。
姦通罪とは。
結婚している人が、自分の配偶者以外の人と性的な関係を持つことを昔は『姦通罪』と呼んで、罪として罰していました。ただし、今はありません。昔は法律で決められていましたが、女性と、その相手になった男性だけが罰せられるという、不公平なものでした。
姦通罪とは何か

結婚している人が、配偶者以外の人と肉体関係を持つことを、かつては姦通罪と呼んでいました。これは、夫婦という特別な関係における約束を破り、お互いの信頼を深く傷つける行為として、法律で罰せられていました。かつての日本では、結婚の誓約は、社会の秩序を守る上でも大切なものと考えられており、姦通は家庭を壊すだけでなく、社会全体の道徳観念を揺るがす行為と見なされていたのです。そのため、刑法第183条に姦通罪が明記され、主に女性が有罪判決を受けていました。これは、当時の社会において女性が男性に従属する立場にあったことや、男性が女性に対して貞操を強く求めていたことが背景にあります。
しかし、時代が進むにつれて、個人の自由や権利が尊重されるようになりました。夫婦間の問題についても、法律で罰するのではなく、当事者同士で解決すべきだという考え方が広まりました。また、姦通罪の存在は、女性の権利を不当に制限しているという批判もありました。女性だけが処罰の対象となりやすく、男性は罪に問われないケースが多かったからです。このような状況を踏まえ、昭和48年の法改正によって姦通罪は廃止されました。これは、国民の意識の変化や、女性の社会進出などを反映した結果と言えるでしょう。現在では、たとえ配偶者が不貞行為を働いたとしても、刑事罰として処罰されることはありません。ただし、民事裁判においては、不貞行為が離婚原因となったり、慰謝料請求が認められたりすることはあります。これは、不貞行為が夫婦間の信頼関係を破壊する行為であることに変わりはないからです。
| 時代 | 姦通罪 | 処罰 | 背景・理由 |
|---|---|---|---|
| 過去 | 存在 | 主に女性が有罪 刑法183条 |
・夫婦の誓約は社会秩序を守る上で重要 ・姦通は家庭だけでなく社会全体の道徳観念を揺るがす行為 ・女性が男性に従属する立場 ・男性が女性に貞操を強く求めた |
| 昭和48年以降 | 廃止 | 刑事罰なし 民事裁判で離婚原因、慰謝料請求はあり |
・個人の自由や権利の尊重 ・夫婦間の問題は当事者同士で解決すべき ・姦通罪は女性の権利を不当に制限 ・国民の意識の変化 ・女性の社会進出 ・不貞行為は夫婦間の信頼関係を破壊する行為 |
歴史に見る姦通罪

かつての日本では、夫婦の一方が配偶者以外の人と性的な関係を持つことを禁じる姦通罪が存在しました。この罪は明治時代に制定された刑法に盛り込まれ、長い間、日本の家族観や道徳観に大きな影響を与えてきました。
姦通罪が生まれた背景には、当時の家父長制的な家族制度が深く関わっています。家制度においては、家の存続と秩序を維持することが最優先事項とされ、その中で特に女性の貞操は家の名誉や血統の純粋さを守る上で非常に重要視されていました。そのため、姦通は家制度そのものを揺るがす行為と見なされ、厳しい罰則が科せられていました。
しかし、時代が進むにつれて社会の価値観は大きく変化しました。男女平等や個人の尊厳といった考え方が広まり、女性も男性と同様に自由と権利を持つべきだという認識が強まっていったのです。このような社会の変化の中で、女性だけが不平等に処罰される姦通罪は、憲法で保障された平等権に反するとして、多くの批判を受けるようになりました。
特に女性の社会進出が進むにつれて、姦通罪は女性の自立や自己実現を阻害する要因ともみなされるようになりました。仕事や社会活動で活躍の場を広げる女性にとって、姦通罪は不当な制約であり、個人の自由な選択を制限するものとして、廃止を求める声がますます高まっていきました。
そして、長年の議論と社会的な動きの結果、ついに姦通罪は廃止されました。これは、時代遅れとなった規範から脱却し、個人の尊厳と自由を尊重する社会へと進むための重要な一歩となりました。現代社会においては、夫婦間の問題や性に関する倫理は、法律による強制ではなく、個々の責任と信頼に基づいて解決されるべきものと考えられています。
| 時代 | 社会状況 | 姦通罪の扱い | 主な要因・理由 |
|---|---|---|---|
| 明治時代 | 家父長制、家の存続・秩序重視、女性の貞操重視 | 刑法に規定、厳しい罰則 | 家制度の維持、家の名誉・血統の純粋性確保 |
| 時代を経るにつれて | 男女平等、個人の尊厳といった考え方が広まる、女性の権利意識の高まり | 批判の高まり、憲法の平等権に反するとされる | 女性の社会進出、自立や自己実現の阻害要因 |
| 現代 | 個人の尊厳と自由の尊重 | 廃止 | 時代遅れの規範からの脱却、個人の責任と信頼に基づく解決 |
姦通罪廃止の理由

かつて我が国には、配偶者のある者が他の者と性的な関係を持つことを罰する法律、いわゆる姦通罪が存在しました。しかし、この法律は時代にそわないものとなり、廃止されるに至りました。その大きな理由として、まず挙げられるのが、男女の扱いの不平等、つまり性差別です。妻が他の男性と関係を持った場合、妻と相手の男性の両方が罰せられました。ところが、夫が他の女性と関係を持った場合、罰せられるのは相手の女性だけで、夫自身は罪に問われませんでした。これは、女性だけが罪に問われやすいという不平等な状況を生み出し、男女平等を定めた憲法の理念に明らかに反するものでした。
もう一つの廃止理由は、国家による過剰な私生活への介入です。夫婦間の問題は、本来は夫婦間で話し合って解決すべきものです。そこに国家が刑罰という形で介入することは、個人の自由やプライバシーを不当に侵害するものでした。夫婦間の問題は、時に深刻な対立を生みますが、解決のためには、話し合いや信頼関係の回復といった努力が必要です。そこへ、国家が介入し、刑罰を科すことは、問題解決をより困難にする可能性もありました。むしろ、国家は、夫婦間の問題解決を支援するための制度を整備するべきです。
こうした強い批判の声を受け、国会はついに姦通罪を廃止しました。これにより、夫婦間の不貞行為は犯罪ではなくなり、民法上の離婚原因の一つとして扱われるようになりました。つまり、不貞行為によって夫婦関係が破綻した場合、離婚を求めることはできますが、国家が刑事罰を与えることはなくなりました。このことは、個人の尊厳とプライバシーを尊重する社会の実現に向けた、大きな一歩と言えるでしょう。
| 廃止理由 | 詳細 |
|---|---|
| 男女の扱いの不平等(性差別) | 妻が不貞行為を働いた場合、妻と相手男性が処罰される一方、夫が不貞行為を働いた場合、相手女性のみが処罰され、夫は罪に問われない。これは憲法の男女平等に反する。 |
| 国家による過剰な私生活への介入 | 夫婦の問題は夫婦間で解決すべきであり、国家が刑罰をもって介入するのは個人の自由やプライバシーの侵害。 |
廃止後の影響

結婚生活における不貞行為を取り締まる法律、いわゆる姦通罪は、廃止されて久しいですが、その廃止は私たちの社会に様々な影響を与えました。かつては、主に女性だけが罪に問われるという不平等な法律でしたが、廃止によって男女が法の下で平等に扱われるという当然の権利が守られるようになりました。これは、女性の社会的地位の向上という点で大きな前進と言えるでしょう。
姦通罪の廃止は、国家による個人の生活への介入を減らし、個人の尊厳や自由を尊重する社会の実現にも繋がりました。夫婦間の問題、特に不貞行為に関する問題は、以前は国家が介入する刑事事件として扱われていましたが、今では夫婦という当事者間で解決すべき問題と捉えられるようになりました。
しかし、法律がなくなったからといって、不貞行為が社会的に認められたわけではありません。不貞行為は依然として道徳的に非難される行為であり、多くの場合、社会的な制裁を受けることになります。さらに、法律上も不貞行為は民法上の不正行為にあたるとされており、損害賠償請求の対象となります。不貞行為によって精神的な苦痛を受けた配偶者は、加害者である配偶者と不貞相手に対して慰謝料を請求することができ、裁判所も多くの場合、この請求を認めています。
このように、姦通罪は廃止されましたが、不貞行為が法的に全く意味を持たなくなったわけではありません。不貞行為は、民事上の責任を問われる可能性がある行為であり、社会的な非難を免れるものでもないことを理解しておく必要があります。
| 項目 | 姦通罪廃止前 | 姦通罪廃止後 |
|---|---|---|
| 法的側面 | 女性が主に罪に問われる刑事事件 |
|
| 社会・道徳的側面 | 道徳的に非難される行為 | 道徳的に非難される行為 |
| その他 | 国家による個人の生活への介入 |
|
探偵と不貞行為の証拠収集

配偶者の不貞行為が疑われる場合、その事実を証明する証拠が必要となります。かつては姦通罪として刑事罰の対象でしたが、今では民事上の慰謝料請求の根拠として用いられます。このような証拠集めを専門に行うのが探偵です。
探偵は、浮気調査の専門家として、様々な手法を用いて証拠を集めます。尾行と張り込みによって対象者の行動を監視し、写真や動画で不貞の現場を押さえることが主な手法です。さらに、位置情報や行動履歴の特定、関係者への聞き取り調査なども行います。これらの調査によって、不貞行為の日時、場所、相手といった詳細な情報を明らかにします。
しかし、探偵の調査は、常に法の範囲内で行われなければなりません。個人のプライバシーは法律によって保護されており、違法な手段を用いた証拠収集は許されません。例えば、住居への侵入や無許可での写真撮影、盗聴器の設置などは違法行為であり、刑事罰の対象となる可能性があります。また、たとえ証拠が不貞行為を示すものであっても、違法に収集された証拠は裁判で証拠能力を欠き、慰謝料請求に役立たないばかりか、逆に訴えられる可能性も出てきます。
探偵に調査を依頼する際は、探偵業法を遵守し、適法な調査を行う業者を選ぶことが重要です。料金の安さだけで判断せず、調査方法や実績、法的知識などを確認しましょう。契約内容も詳細に確認し、不明な点は必ず質問して納得してから契約を結びましょう。自分で証拠を集める場合も、違法行為にならないよう、慎重に行動しなければなりません。配偶者の携帯電話を無断で操作したり、SNSのアカウントを盗み見たりする行為は、プライバシー侵害にあたる可能性があります。法的な知識を持ち、正しい方法で証拠を集めることが大切です。
| 行為 | 種類 | 詳細 | 合法性 |
|---|---|---|---|
| 探偵による調査 | 尾行・張り込み | 対象者の行動監視、写真・動画撮影 | 合法 |
| 位置情報・行動履歴特定 | GPSなど | 合法(ただし、方法によっては違法となる可能性もある) | |
| 関係者への聞き込み | 情報収集 | 合法 | |
| 住居侵入、無許可撮影、盗聴器設置 | プライバシー侵害 | 違法 | |
| 個人での証拠収集 | 携帯電話の無断操作 | プライバシー侵害 | 違法 |
| SNSアカウントの盗み見 | プライバシー侵害 | 違法 |
