
離婚と強制執行認諾条項:その効力と注意点
強制執行認諾条項とは、公正証書の中に書き込まれる特別な約束事です。この条項は、金銭の貸し借りや養育費の支払いなど、将来発生する債務について、あらかじめ支払いを確約するために用いられます。もし約束が守られなかった場合、通常は裁判を起こして判決を得てからでないと強制執行(財産の差し押さえなど)はできません。しかし、この条項が公正証書に含まれていると、裁判の手続きを経ずに、直接強制執行の手続きに移ることができます。つまり、約束を破った相手方の財産(預貯金、給与、不動産など)を、裁判所の手続きを通じて差し押さえることができるのです。
通常、強制執行をするには、まず裁判所に訴訟を起こし、相手方に支払い義務があるという判決を得る必要があります。この裁判には、少なからず時間と費用がかかります。また、裁判で勝訴できる保証もありません。しかし、強制執行認諾条項付きの公正証書があれば、裁判という時間と費用のかかる手続きを省略でき、迅速に強制執行手続きに移行できます。これは、債権者にとって大きなメリットです。特に、相手方の経済状況が不安定な場合や、支払いが滞る可能性が高い場合には、この条項の効力は絶大です。
例えば、離婚の際に養育費の支払いを約束した公正証書にこの条項が含まれていれば、支払いが滞った場合、相手方の給与を差し押さえるといった措置をすぐに取ることができます。また、事業資金の貸し付けなど、金銭の貸し借りの際にも、この条項を付けておくことで、貸したお金がスムーズに回収できる可能性が高まります。
強制執行認諾条項は、債権者にとって強力な武器となりますが、債務者にとっては重い負担となる可能性もあります。そのため、公正証書を作成する際には、内容をよく理解し、将来のリスクについても慎重に検討する必要があります。特に、債務者となる側は、自身の返済能力を過信せず、将来の経済状況の変化も考慮に入れて、この条項を付けるかどうかを判断することが大切です。