告訴がなければ起訴されない?親告罪の基礎知識

告訴がなければ起訴されない?親告罪の基礎知識

調査や法律を知りたい

先生、『親告罪』ってよく聞くんですけど、どんな犯罪のことですか?

調査・法律研究家

簡単に言うと、被害者やその家族など特定の人からの訴えがなければ、裁判を起こせない犯罪のことだよ。例えば、軽傷を負わせる傷害事件や、家族間のお金に関する犯罪などが親告罪にあたる場合があるね。

調査や法律を知りたい

なるほど。訴えがなければ裁判にならないんですね。でも、もし訴えなくても警察は捜査するんですか?

調査・法律研究家

うん。訴えられる可能性がある場合、警察は捜査をすることがあるよ。ただし、訴えがなければ最終的に裁判にはならないんだ。また、一度訴えても、裁判が始まるまでは訴えを取り下げることができるけど、裁判が始まったら取り下げられないんだよ。

親告罪とは。

『告訴がなければ起訴されない犯罪』について説明します。この種類の犯罪は、被害者など告訴する権利を持つ人からの訴えがなければ、検察官は起訴することができません。

例としては、性犯罪(強制わいせつや強姦)、名誉に関わる犯罪(名誉毀損や侮辱)、軽い犯罪(過失による傷害や物の損壊)、家族間での金銭に関わる犯罪(窃盗、詐欺、横領、恐喝、不動産の不当な占有)などがあります。

告訴がなくても、将来告訴される可能性に備えて、警察が捜査を行う場合があります。

告訴は、起訴される前であれば取り下げることができます。しかし、一度起訴されてしまうと、取り下げることはできなくなります。

もし、告訴がないのに起訴されてしまった場合は、裁判の結果、訴え自体が却下されます。

親告罪とは何か

親告罪とは何か

親告罪とは、被害者またはその保護者など法律で定められた代理人からの訴えがなければ、検察官が裁判にかけることができない犯罪のことです。普通の犯罪であれば、警察などの捜査機関が犯罪の事実をつかめば、検察官が裁判にかけることができます。しかし、親告罪の場合は、たとえ犯罪の事実がはっきりと分かっていても、被害者などからの訴えがなければ、裁判にかけることができません。

これは、被害者の意思を尊重し、訴えるかどうかという手続きを通じて、被害者自身が事件をどう解決していくかを選べるようにするための制度です。例えば、ちょっとした言い争いから起きた暴力事件などで、当事者同士で穏やかに解決できる見込みがある場合、必ずしも国が介入する必要はないと考えられています。このような場合、親告罪という制度は、被害者による自主的な解決を促す役割を担います。

親告罪は、犯罪の種類によって必要となる告訴する人が異なります。例えば、告訴権者は、基本的には被害者本人ですが、被害者が15歳未満の場合や、意思能力がない場合には、法定代理人が告訴する権利を持ちます。法定代理人とは、未成年者であれば親権者、成年被後見人であれば後見人などが該当します。また、被害者が死亡した場合には、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹が告訴することができます。

告訴には期限があり、犯罪が起きた時から6か月以内にしなければなりません。この期限を過ぎると、たとえ訴えがあっても、裁判にかけることはできなくなります。このように、親告罪は、被害者の意思を尊重し、円満な解決を図ることを目的とした制度であるため、告訴の有無や期限といった要件をしっかりと理解することが重要です。

項目 内容
親告罪の定義 被害者またはその保護者など法律で定められた代理人からの訴え(告訴)がなければ、検察官が裁判にかけることができない犯罪。
制度の目的 被害者の意思を尊重し、訴えるかどうかという手続きを通じて、被害者自身が事件をどう解決していくかを選べるようにするため。被害者による自主的な解決を促す。
告訴権者
  • 基本的には被害者本人
  • 被害者が15歳未満または意思能力がない場合:法定代理人(親権者、後見人など)
  • 被害者が死亡した場合:配偶者、直系の親族、兄弟姉妹
告訴期限 犯罪が起きた時から6か月以内

親告罪の典型例

親告罪の典型例

告訴がなければ起訴されない犯罪、いわゆる親告罪。いくつか種類がありますが、代表的なものを取り上げて詳しく見ていきましょう。まず、人の名誉や評判を傷つける名誉毀損罪。真実でない情報を流布したり、事実を歪めて伝えたりすることで成立します。インターネットの普及で、誰もが情報を発信できるようになった現代において、特に注意が必要な犯罪と言えるでしょう。次に、面と向かって相手を辱める侮辱罪。こちらは、事実の有無は関係なく、公然と相手を軽蔑する言動をとることで成立します。名誉毀損罪と侮辱罪は、被害者の告訴がなければ裁判になりません。これは、当事者間で話し合い、和解で解決する余地を残すためです。

軽い怪我を負わせる傷害罪も親告罪です。殴る蹴るなどの暴行を加えて怪我をさせても、怪我の程度が軽ければ、被害者の告訴がなければ処罰されません。こちらも、加害者と被害者が示談によって解決することを想定しています。同様に、他人の物を壊す器物損壊罪も親告罪です。壊れた物の価値が低い場合、被害者の告訴がなければ処罰されません。示談で弁償すれば、事件を穏便に解決できる可能性があります。

少し特殊なものとして、親族間の窃盗罪があります。家族間で物を盗んだとしても、被害届を出した家族の告訴がなければ、罪に問われません。これは、家族という閉鎖的な集団の中で起きた問題に、国がむやみに介入すべきではないという考えに基づいています。家族間の問題であれば、家族内で解決するのが望ましいという配慮でしょう。このように、親告罪は、犯罪の種類や被害者との関係性などを考慮して定められています。被害者の意思を尊重し、柔軟な解決を図るための制度と言えるでしょう。

犯罪名 内容 備考
名誉毀損罪 真実でない情報を流布したり、事実を歪めて伝えたりすることで、人の名誉や評判を傷つける。 インターネットでの発信に注意。
侮辱罪 公然と相手を軽蔑する言動をとる。事実の有無は関係ない。
軽い傷害罪 殴る蹴るなどの暴行を加えて軽い怪我をさせる。 示談による解決を想定。
器物損壊罪(軽微な場合) 他人の物を壊す。(壊れた物の価値が低い場合) 示談による解決を想定。
親族間の窃盗罪 家族間で物を盗む。 家族内の問題を国家が介入しないための配慮。

告訴の取り下げと告訴の効力

告訴の取り下げと告訴の効力

告訴を取り下げるということは、犯罪の被害を受けた人が、犯罪者を訴えることをやめるということです。告訴を取り下げることができるのは、親告罪という、被害者の告訴がなければ裁判をすることができない種類の犯罪に限られます。例えば、侮辱罪や名誉毀損罪、軽犯罪法違反などです。

告訴を取り下げることができるのは、検察官が正式に裁判を始めることを決める「起訴」の前までです。起訴前に告訴が取り下げられれば、検察官はその後、告訴を取り下げられた事件について起訴することはできなくなります。これは、親告罪においては、被害者の意思を尊重することが大切だと考えられているからです。告訴を取り下げる手続きは、書面で、告訴をした検察庁に提出します。

しかし、いったん起訴されてしまうと、たとえ被害者が告訴を取り下げたいと思っても、裁判は続けられます。起訴後は、犯罪者を裁くのは国家の責任となり、被害者個人の意思で裁判を止めることはできなくなります。これは、犯罪行為を罰することは、社会全体の秩序を守るために必要であり、個人の都合で左右されるべきではないという考え方によるものです。

告訴は、起訴前の段階でだけ効力を持つと言えます。起訴前に告訴を取り下げれば、検察官は起訴できません。しかし、起訴後は、たとえ告訴が取り下げられても裁判は継続され、判決が下されます。このように、告訴の取り下げの効果は、起訴前か起訴後かで大きく変わるため、注意が必要です。

告訴の取り下げと告訴の効力

親告罪と告訴の必要性

親告罪と告訴の必要性

親告罪とは、被害者の意思を尊重し、告訴がなければ検察官は起訴できない犯罪のことです。告訴とは、捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求めることです。親告罪で告訴が必要な理由は、被害者自身の意思を尊重し、被害者が自ら事件の解決を望む場合にのみ、国家権力が介入するという考え方に基づいています。

例えば、名誉毀損(めいよきそん)や侮辱罪(ぶじょくざい)などは親告罪にあたります。これらの犯罪は、個人の名誉や感情を害する行為ですが、必ずしも国家が介入する必要はありません。被害者が、相手を許したり、示談(じだん)によって解決することを望む場合もあるからです。もし、これらの犯罪で告訴が不要であれば、当事者の意向に反して、国家が介入することになりかねません。これは、被害者にとって望ましい結果をもたらさない可能性があります。

告訴するためには、所定の書式に犯罪事実、被疑者名、告訴の意思などを明確に記載した告訴状を作成し、警察署や検察庁に提出する必要があります。口頭での告訴は認められていません。告訴状には、告訴に至った経緯や具体的な被害内容を詳細に記載することが重要です。証拠となる写真や動画、メール、音声記録などがあれば、添付すると効果的です。告訴状は、事件の真相解明や犯人特定に繋がる重要な資料となるからです。

親告罪における告訴期間は、犯罪を知った日から6ヶ月以内です。この期間を過ぎると、告訴ができなくなりますので注意が必要です。告訴は、被害者自身が行うこともできますし、法定代理人や弁護士に委任することもできます。被害者の保護と紛争の適切な解決のために、告訴制度は重要な役割を果たしています。

項目 内容
親告罪の定義 被害者の意思を尊重し、告訴がなければ検察官は起訴できない犯罪
告訴の定義 捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求めること
親告罪で告訴が必要な理由 被害者自身の意思を尊重し、被害者が自ら事件の解決を望む場合にのみ、国家権力が介入するという考え方に基づく
親告罪の例 名誉毀損、侮辱罪など
告訴の必要性 被害者の意向に反して国家が介入することを防ぐ
告訴の方法 所定の書式に犯罪事実、被疑者名、告訴の意思などを記載した告訴状を作成し、警察署や検察庁に提出
告訴状の重要性 事件の真相解明や犯人特定に繋がる重要な資料
告訴期間 犯罪を知った日から6ヶ月以内
告訴を行う者 被害者自身、法定代理人、弁護士
告訴制度の役割 被害者の保護と紛争の適切な解決

告訴がなくても捜査は行われるのか

告訴がなくても捜査は行われるのか

訴えがなくても、捜査が行われる場合があるということをご存じでしょうか。法律の世界には、告訴がなければ裁判を起こせない「親告罪」という種類の犯罪があります。しかし、親告罪であっても、訴えがなくても捜査機関が動くことがあるのです。これは一体どういうことでしょうか。

将来、被害者が訴えを起こす可能性に備えて、証拠を集めておくという目的で行われる捜査です。特に、性犯罪のように、被害者が心に深い傷を負い、すぐに訴え出るのが難しい事件では、時間が経つにつれて証拠が失われてしまう恐れがあります。肉体的な傷跡は薄れ、記憶も曖昧になるかもしれません。そうなる前に、捜査機関は証拠保全のために、被害者からの訴えを待たずに動き出すことがあるのです。

例えば、性犯罪の現場を保存したり、関係者から話を聞いたり、物的証拠を集めたりといった活動が考えられます。これらの活動は、将来の訴えに備え、真実を明らかにするための準備と言えるでしょう。

ただし、訴えがない限り、検察官は裁判を起こすことができません。ですから、訴えがない段階での捜査は、あくまで予備的なものにとどまり、本格的な捜査に発展することはありません。言わば、いざ訴えがあった時に、スムーズに捜査を進められるよう、準備を整えている段階と言えるでしょう。

そして、もし被害者から訴えがあれば、捜査機関はそれまで集めてきた証拠をもとに、本格的な捜査を開始します。関係者の取り調べや、さらに詳しい証拠の収集などを行い、事件の全容解明に努めます。そして、十分な証拠が集まれば、事件を検察官に送致し、裁判へと進むことになります。このように、訴えがなくても行われる捜査は、真実を明らかにし、正義を実現するために重要な役割を担っていると言えるでしょう。

告訴がなくても捜査は行われるのか

告訴なしの起訴と公訴棄却

告訴なしの起訴と公訴棄却

告訴状が提出されていない親告罪で、検察官が起訴してしまうケースを考えてみましょう。親告罪とは、被害者の意思によってのみ犯罪が成立し、処罰を求めるかどうかを決めることができる犯罪のことです。名誉毀損や侮辱罪などが代表的な例です。このような犯罪においては、被害者が告訴状を警察や検察庁に提出しなければ、捜査機関は事件として取り扱えず、検察官も起訴することはできません

もし、告訴状がないにもかかわらず、検察官が起訴してしまった場合はどうなるのでしょうか。この場合、裁判所は公訴棄却の判決を言い渡します。公訴棄却とは、起訴状に不備があったり、そもそも起訴することができない事案であると判断された場合に、裁判所が審理を行わずに事件を終わらせる手続きのことです。親告罪で告訴がない場合は、起訴要件を満たしていないため、裁判を行うこと自体が認められないのです。たとえ検察官がどれだけ確実な証拠を集め、犯罪事実を立証できたとしても、告訴という手続きを踏んでいなければ、裁判をすることはできません。これは、被害者の意思を尊重し、処罰を求めるかどうかを被害者に委ねるという親告罪の性質から当然のことと言えるでしょう。

公訴棄却の判決が確定すると、被告人は無罪となります。無罪判決と同様に、前科もつかず、犯罪者として扱われることもありません。また、起訴によって被った不利益に対して、国に損害賠償を請求できる可能性もあります。このように、親告罪における告訴は、起訴の可否を左右するだけでなく、被告人の権利を守る上でも非常に重要な役割を担っています。告訴という手続きがあることで、被害者の意思が尊重され、適正な刑事手続きが確保されるのです。

親告罪における告訴状の有無と結果
告訴状 検察官の行為 裁判所の判断 結果 備考
なし 起訴 公訴棄却 被告人は無罪、前科なし、国に損害賠償請求の可能性あり 被害者の意思を尊重、起訴要件を満たしていない
あり 起訴 裁判開始 裁判結果による 適正な刑事手続きの確保