未来の権利、いま請求できる？将来給付の訴え

未来の権利、いま請求できる？将来給付の訴え

将来給付の訴えとは

将来給付の訴えとは、まだ受け取る権利が生まれていない、これから受け取るお金などについて、前もって裁判所に訴えを起こし、判決を求める手続きのことです。簡単に言うと、将来もらえるはずのお金について、前もって裁判で決めてもらうということです。

例えば、会社員が不当解雇された場合、これからもらえるはずだった給料について、将来給付の訴えを起こすことができます。また、離婚の際に、これから支払われるはずの養育費や年金分割について、前もって裁判で決めてもらうことも可能です。他にも、将来支払われる予定の地代や家賃なども、将来給付の訴えの対象となります。

通常、裁判では既に発生した権利について争いますが、将来給付の訴えは、これから発生するであろう権利について、前もって確定させるための制度です。これは、将来の争いを防ぎ、権利関係をはっきりさせることで、社会の秩序を守ることを目的としています。

しかし、将来給付の訴えは、誰でも自由に起こせるわけではありません。法律では、将来給付の訴えを起こせる場合を限定しています。具体的には、将来の権利が不安定な状態に置かれており、訴えを起こすことで権利を守らなければならない場合にのみ認められます。つまり、将来お金などをもらえる保証がなく、訴えを起こさなければ権利の実現が難しくなるような状況でなければ、将来給付の訴えは認められないのです。

例えば、相手が会社を倒産させようとしている場合や、財産を隠そうとしている場合など、将来の給付が受けられなくなる可能性が高い場合には、将来給付の訴えが認められる可能性があります。しかし、単に将来の給付が心配だというだけでは、将来給付の訴えは認められません。

このように、将来給付の訴えは限定的に運用されています。これは、不要な訴訟を減らし、裁判所の負担を軽くするとともに、訴えられる側の権利も守るためです。将来給付の訴えは、将来の権利を守るための重要な制度ですが、その要件は厳しく定められていることを理解しておく必要があります。

訴えが認められる場合

お金の支払いを将来受け取る約束をしている場合、その約束が本当に守られるか心配になることがあります。そのような場合、将来の支払いを求める訴えをあらかじめ起こすことができる場合があります。これは、民事訴訟法135条で定められており、「あらかじめ請求し、判決を得ておく必要がある場合」に限られています。つまり、ただ単に将来の支払いが心配だというだけでは訴えは認められません。客観的に見て、訴えを起こす必要性が高いと認められる場合に限られます。

では、どのような場合に訴えを起こす必要性が高いと認められるのでしょうか。例えば、相手が支払いを拒否する可能性が高い場合が考えられます。相手が事業に失敗してお金が無くなってしまうかもしれない、あるいは、財産を売って逃げてしまうかもしれない、など、支払いができない状態になることが予想される場合です。また、相手が支払いを拒否するとは明言していなくても、支払いを渋っているような態度を見せている場合も、訴えを起こす必要性があると判断されることがあります。

将来のトラブルを避けるために、あらかじめ支払いの約束を裁判所の判決という形で確定させておきたいという場合も、訴えが認められる可能性があります。当事者間で将来の支払いについて合意している場合でも、将来、何らかの事情で相手が支払いを拒否する可能性はゼロではありません。そのような事態に備えて、あらかじめ裁判所に訴えを起こし、判決を得ておくことで、将来の支払いを確実にすることができるのです。

具体的な例としては、離婚の際に取り決める将来の養育費の支払いがあります。子どもが成長するまで毎月きちんと養育費が支払われるか心配な場合、あらかじめ訴えを起こし、判決を得ておくことで、将来の支払いを確保することができます。また、年金のように定期的に支払われるお金の請求も同様です。将来に渡って安定した収入を確保するために、あらかじめ訴えを起こしておくことで、安心して生活を送ることができます。

ただし、訴えが認められるかどうかは、それぞれの状況によって裁判所が判断します。必ずしも、訴えを起こせば必ず認められるというわけではありません。裁判所は、当事者の事情、証拠などを総合的に考慮して判断を下します。

訴えを起こすメリット

将来発生するお金の受け取りなどをめぐって、前もって裁判を起こしておくことには、いくつかの利点があります。 まず、第一に将来の権利をより早く確実にできるということです。裁判の結果、判決という形で権利が認められれば、相手が将来お金の支払いを拒否した場合でも、裁判所に強制的に支払いをさせる手続きをとることができます。そのため、将来の生活設計を安心して立てることができるという大きなメリットが生まれます。

第二に、裁判によって権利関係をはっきりさせることで、将来起こるかもしれない争いを防ぐ効果も期待できます。お金の受け取りをめぐる争いは、当事者にとって大きな負担となります。裁判で前もって権利関係を確定させておけば、このような負担を避けることができる可能性が高まります。特に、相手のお金に関する状況が不安定な場合や、将来の支払いに不安がある場合は、前もって裁判を起こしておくことで、将来のトラブルを未然に防ぐ効果が高まります。

第三に、裁判を起こすという行為自体が、相手にプレッシャーを与える効果も期待できます。裁判所という公的な機関が関与することで、相手は支払いの義務について真剣に考えるようになり、裁判になる前に話し合いで解決できる場合もあります。

最後に、将来の裁判で有利な証拠として使えるという点も重要です。相手が将来支払いをしなかった場合、過去の判決は、あなたの権利が正当であることを示す強力な証拠となります。そのため、改めて裁判を起こす際にも、有利な立場に立つことができます。このように、将来のお金の受け取りについて前もって裁判を起こしておくことは、様々なメリットがあり、将来の安心を確保するための有効な手段といえます。

準備と注意点

将来のお金の受け取りに関する裁判を起こす場合は、念入りな準備が欠かせません。まずは、本当に裁判を起こす必要があるのかをじっくり考える必要があります。漠然とした将来への不安だけでは足りません。客観的に見て、裁判を起こすだけの正当な理由があるのかどうかを判断しなければなりません。そのためには、法律の専門家である弁護士に相談し、的確な助言を受けることが大切です。

裁判を起こす前に、相手とじっくり話し合い、解決策を探ることも重要です。裁判は時間もお金もかかるため、話し合いで解決できる見込みがあるなら、そちらを優先的に考えるべきです。

さらに、裁判を起こす際は、将来のお金の受け取りに関する証拠をきちんと集めておく必要があります。契約書や領収書、証人の証言など、将来のお金の受け取りを裏付ける証拠を提出することで、裁判所が訴えを認める可能性が高まります。例えば、口約束だけで将来の支払いについて合意していた場合、それを証明する手段がなければ、裁判で認められない可能性があります。メールや手紙、第三者の証言などを集め、将来支払う約束をしていた事実を証明できるように準備しておくことが重要です。

また、裁判では、将来受け取る金額を具体的に計算する必要があるため、金額の根拠となる資料も準備しておく必要があります。過去の取引記録や、業界の平均的な価格などを参考に、受け取るべき金額を算出し、その根拠を示す資料を用意しましょう。

これらの準備を怠ると、訴えが認められないだけでなく、時間もお金も無駄になる可能性があります。ですので、事前の準備は非常に重要です。

弁護士への相談

将来のお金に関する裁判は、法律の専門知識が必要な難しい問題です。そのため、弁護士に相談するのが一番良いでしょう。弁護士は、将来のお金に関する裁判について、たくさんの経験と知識を持っています。それぞれの状況に合わせて、的確な助言をくれます。裁判を起こす必要があるかどうか、裁判で勝てる見込みはあるか、どのような証拠を集めたら良いかなど、色々な疑問に答えてくれます。

弁護士は、裁判の手続きも代わりに行ってくれます。裁判の手続きは、複雑で時間と手間がかかります。弁護士に頼むことで、面倒な手続きをスムーズに進めることができます。さらに、弁護士は、相手との話し合いも代わりに行ってくれます。裁判を起こす前に、弁護士が相手と話し合うことで、裁判をしなくても、問題が解決することもあります。

弁護士に支払う費用は、事件の内容や弁護士事務所によって違います。将来の自分の権利を守るためには、必要な費用だと考えるべきでしょう。弁護士に相談することで、時間とお金を節約できるだけでなく、より良い結果を得られる可能性が高まります。

将来のお金に関することで、少しでも分からないことや不安なことがあれば、すぐに弁護士に相談することを強くお勧めします。相談することで、問題解決の糸口が見つかるかもしれません。一人で悩まずに、まずは専門家の意見を聞いてみましょう。早い段階で相談することで、より多くの選択肢を検討できますし、落ち着いて対応できるはずです。弁護士は、依頼者の利益を守るために最善を尽くしてくれます。安心して相談してみましょう。