離婚と夫婦間契約の解消

離婚と夫婦間契約の解消

調査や法律を知りたい

先生、「離婚における『夫婦間契約の取消』」ってどういうことですか?難しい言葉が多くてよくわからないです。

調査・法律研究家

そうだね、少し難しいね。簡単に言うと、結婚している夫婦が、結婚生活中に2人だけで何か約束事をしても、どちらか一方が「やっぱりやめる」と言えば、その約束事をなかったことにできるんだよ。例えば、財産分与の約束や、生活費の負担などだね。

調査や法律を知りたい

え、いつでもやめていいんですか?約束したのに、それは不公平じゃないですか?

調査・法律研究家

確かに不公平に感じる場合もあるよね。でも、昔は「夫婦の問題は夫婦で解決するもの」という考え方が強かったから、法律や裁判所は夫婦間の問題にはあまり介入しないようにしていたんだ。ただし、すでに離婚が決まっている夫婦などは、このルールは適用されないんだよ。あと、他の人に迷惑をかけるような約束の場合は、取消すことはできないんだ。

離婚における「夫婦間契約の取消」とは。

日本では、結婚している夫婦が結婚生活中に結んだ約束事は、他人の権利を侵害しない限り、どちらか片方からいつでもなかったことにできるとされています(民法第754条)。これは「法律は家庭の問題には介入しない」ということわざが示すように、夫婦に関することは夫婦自身で解決すべきであり、法律や裁判所が関与すべきではないという考え方に基づいています。ただし、このルールはすでに夫婦関係が壊れている夫婦の間で交わされた約束事には適用されないとされています。

夫婦間契約とは

夫婦間契約とは

夫婦間契約とは、結婚している二人で将来のことについて約束事を決めておくことです。たとえば、財産をどのように分けるか、生活費はどのように負担するか、子どもが生まれたらどちらが親権を持つのかなど、結婚生活における様々な取り決めをしておくことができます。口頭での約束でも法的には有効ですが、後々「言った」「言わない」でもめるのを防ぐために、文書に書いて残しておくことが大切です。

この夫婦間契約は、結婚生活を円滑に進める上で重要な役割を果たします。例えば、家事や育児の分担、週末の過ごし方、親の介護など、普段の生活で起こりうる様々な問題について事前に話し合い、合意しておくことで、のちのちのトラブルを未然に防ぐことができます。また、夫婦間で金銭の管理方法や財産の処分方法を決めておくことで、将来の相続問題で揉めるリスクを減らすこともできます。

しかし、夫婦間契約には注意すべき点もあります。夫婦の一方が強い立場を利用して、もう一方に不利益な内容の契約を押し付ける可能性があるからです。例えば、一方的に財産を放棄させたり、親権を奪ったりするような契約は、公序良俗に反するものとして無効となります。また、たとえ契約時に合意していたとしても、生活環境の変化などによって一方の配偶者に不利益が生じる場合があります。このような場合に備えて、法律では夫婦の一方的な意思で契約内容の一部または全部を取り消せる権利を認めています。つまり、一方的に不利な内容になってしまったり、状況が変化して困るようになった場合には、契約を見直すことができるのです。

夫婦間契約は、結婚生活をより良く送るための大切なツールです。しかし、契約内容をよく吟味し、将来の様々な可能性を考慮した上で、慎重に作成する必要があるでしょう。

夫婦間契約とは

取消権の行使

取消権の行使

夫婦間で結んだ契約は、他人の権利を侵害しない限り、いつでも一方的に無効にすることができます。これは民法第七百五十四条で定められており、契約内容に同意していなかったり、後から考えが変わったりした場合でも、どちらか一方の配偶者が自由に契約を破棄できることを意味します。

この規定の背景には、「法は家庭に入らず」という考え方があります。これは、夫婦間の問題は夫婦自身で解決すべきであり、法律が介入すべきではないという原則です。そのため、たとえ不当な内容の契約であったとしても、裁判所は原則として関与しません。夫婦間の約束事は、夫婦という特別な関係性の中で行われるものであり、外部である裁判所が介入することは適切ではないと考えられているからです。

しかし、この契約を無効にする権利には例外があります。それは、夫婦関係が既に破綻している場合です。既に関係が壊れている夫婦間では、「家庭の問題は家庭内で解決する」という原則は適用されないと解釈されます。具体的には、長期間の別居や、離婚訴訟が開始されている場合などが該当します。このような状況では、もはや夫婦間の問題は家庭内で解決できる段階ではなく、法の介入が必要となるからです。

例えば、別居中に夫が妻に無断で高額な商品の購入契約を結んだ場合、妻は取消権を行使して契約を無効にすることができます。しかし、夫婦が円満に生活していた場合、妻はこの権利を行使できない可能性があります。このように、夫婦関係が破綻しているかどうかは、取消権の行使において重要な要素となります。

夫婦間契約の取消権は、夫婦関係の状況によってその効力が左右されるため、個々の状況に応じて慎重に判断する必要があります。取消権の行使を検討する際には、法律の専門家に相談することをお勧めします。

取消権の行使

第三者の権利を害する場合

第三者の権利を害する場合

夫婦間で取り決めた約束事を後からなかったことにできる権利、これを夫婦間契約の取消権といいます。しかし、この権利は常に使えるわけではありません。他の人たちの権利を損ねてしまう場合には、この権利を使うことは制限されます。

例えば、住宅を買うためにお金を借りる際、夫婦で保証人を立てたとします。このとき、夫婦間で住宅ローンの負担割合を変える約束をしたとしても、後から一方的にその約束をなかったことにすると、保証人の負担が大きくなってしまうかもしれません。このような場合、保証人の権利を損なうことになるため、約束をなかったことにする権利は行使できません

また、夫婦で一緒に事業を営んでいる場合を考えてみましょう。事業に関する契約を一方的に取り消すと、取引先に損害を与える可能性があります。これも他の人たちの権利を害することになるため、取消権の行使は制限されます。例えば、夫婦で経営する飲食店が、食材の仕入れ業者と長期契約を結んでいるとします。妻が一方的に契約を取り消した場合、仕入れ業者は、売るはずだった食材を抱え、大きな損失を被る可能性があります。

さらに、夫婦間で贈与契約を結び、夫が妻に高額な宝石を贈ったとします。妻がその宝石を質屋に預け、お金を借りた後、夫との贈与契約をなかったことにした場合、質屋は担保としていた宝石を失うことになります。これも質屋の権利を害するため、取消権の行使は認められません。

このように、夫婦間契約の取消権は、他の人たちの権利とバランスをとる必要があります。自分たちの都合だけで使うのではなく、周りの人たちに影響がないか、よく考えて行使しなければなりません。

第三者の権利を害する場合

夫婦関係の破綻

夫婦関係の破綻

夫婦関係の破綻とは、夫婦が共に生活していくことがもはや不可能なほど関係が壊れてしまった状態のことを言います。 まるで壊れた陶器のかけらを元通りに戻せないように、一度破綻した夫婦関係は修復できないと見なされます。このような状態に至ると、夫婦間の約束事を取り消す権利も失われてしまうのです。

夫婦関係の破綻を判断する基準は様々ですが、重要なのは客観的な証拠です。 例えば、どのくらいの期間、別々に暮らしているか(別居期間)は重要な判断材料となります。数日や数週間といった短い期間ではなく、何ヶ月、何年も別々に暮らしている場合は、関係修復の可能性が低いと判断されるでしょう。

また、離婚する意思があるかどうかも大切な要素です。どちらか一方、あるいは両方がはっきりと離婚の意思表示をしている場合、関係の破綻を示す証拠となります。さらに、夫婦間の話し合いの状態も考慮されます。全く会話がない、あるいは会話しても喧嘩になってしまうなど、建設的なコミュニケーションがとれていない場合は、関係修復は難しいと判断されるでしょう。

暴力や裏切り行為といった、一方の配偶者がもう一方に深刻な精神的・身体的苦痛を与える行為も、夫婦関係の破綻を判断する上で重要な要素となります。このような行為は、信頼関係を根本から破壊するものであり、関係の継続を困難にするからです。

夫婦関係が破綻していると判断されると、夫婦間の契約内容を取り消す権利は失効し、契約は有効とみなされます。 一度壊れてしまった関係は修復不可能であるという法的判断に基づき、それまでの契約内容がそのまま効力を持ち続けるのです。これは、関係が破綻した後でも、双方の権利義務を明確にするために重要な原則です。

夫婦関係の破綻

契約の重要性

契約の重要性

夫婦という間柄は、愛情と信頼で結ばれた特別な関係です。しかし、人生には様々な変化が訪れる可能性があり、予期せぬ事態によって夫婦関係にひびが入ってしまうこともあります。そんな時、夫婦間の取り決めを明確に記した契約があれば、大きな助けとなります。これは、夫婦が将来起こりうる問題に備え、穏やかに解決を目指すための知恵と言えるでしょう。

例えば、財産分与について考えてみましょう。結婚生活中に築き上げた財産は、離婚の際にどのように分けるのか、あらかじめ決めておくことが大切です。それぞれの貢献度や、今後の生活設計などを考慮し、双方が納得できる内容を契約に盛り込むことで、後々の争いを避けることができます。また、子どもの親権についても同様です。子どもにとって最良の環境を提供するために、親権者や養育費、面会交流の方法などを明確に定めておくことは、子どもの将来を守る上で非常に重要です。

契約書を作成する際には、専門家の助言を受けることをお勧めします。法律の専門家である弁護士に相談することで、法律的に有効な契約書を作成することができます。また、自分たちに最適な契約内容についてもアドバイスを受けることができます。契約内容が一方に不利にならないよう、バランスの取れた内容にすることが大切です。夫婦がじっくりと話し合い、互いを尊重しながら、公平な契約を結ぶようにしましょう。

契約は、夫婦生活を支える重要な基盤です。契約内容をしっかりと理解し、責任を持って締結することで、将来の安心を築くことができます。穏やかで幸せな夫婦生活を送るためにも、契約の重要性を改めて認識し、積極的に活用していくべきです。

契約の重要性