不完全履行:契約トラブルとその対処法

調査や法律を知りたい
『不完全履行』って、どういう意味ですか?

調査・法律研究家
約束した通りのものが、きちんと渡されなかったり、サービスがちゃんと提供されなかったりすることを言います。例えば、注文した商品とは違うものが届いたり、修理を頼んだのにちゃんと直っていなかったりする場合がこれにあたります。

調査や法律を知りたい
じゃあ、もし不完全履行が起こったら、どうすればいいんですか?

調査・法律研究家
不完全な物やサービスを受け取るのを拒否できます。また、きちんと約束通りにしてもらうよう要求することもできます。もし、どうしても約束通りにならない場合は、契約をなかったことにして損害賠償を請求することも可能です。
不完全履行とは。
約束が果たされていないことについて説明します。約束は、相手への何かしらの行為によって果たされますが、その行為が約束の中心的な内容から外れていたり、不十分な場合、約束はきちんと果たされたとは言えません。これを「不完全履行」と言います。これは、約束の履行が遅れたり、もしくは全く果たされないことと並んで、約束が破られたとみなされるものの一つです。約束された人は、不十分な行為を受け入れることを拒否できます。また、きちんと約束が果たされる見込みがある場合は、約束の履行が遅れているものとして扱うことができ、もしきちんと約束が果たされる見込みがない場合は、約束が全く果たされないものとして扱うことができます。いずれの場合も、約束をなかったことにして損害に対する賠償を求めることができます。
不完全履行とは

約束事をきちんと果たしていない状態を不完全履行といいます。これは、当事者間で取り決められた契約の内容に沿って、債務を負う側が債権を持つ側に対して何かを行うべきときに、その行為が契約で定められた通りではない場合を指します。
例えば、お店で5個のりんごを注文したのに、3個しか届かなかった場合を考えてみましょう。これは、りんごを全く送らなかったわけではなく、一応届いているものの、数が合っていないため、不完全履行にあたります。
また、家を建てる契約で、設計図では窓を3つ付けることになっていたのに、実際に建てられた家には窓が2つしかなかった場合も、不完全履行となります。これも、家を全く建てなかったわけではなく、一応完成しているものの、設計図と異なるため不完全履行とみなされます。
重要なのは、全く何もしなかったわけではないという点です。もし何もしていなければ、それは「履行不能」、つまり約束事を全く果たせない状態です。また、約束の期日までに履行が完了していなければ、「履行遅滞」、つまり約束の期日を過ぎてしまっている状態です。不完全履行は、これらとは異なり、一応履行はしているものの、契約内容と完全に一致していない状態を指します。
不完全履行は、約束をきちんと果たしていないという意味で、債務不履行の一種です。債務不履行とは、債務者が債権者に対して負っている義務を果たさないことを広く指す言葉です。債権者は、不完全履行に対して、契約内容どおりの完全な履行を求めたり、損害を賠償するように請求したり、契約を解除したりといった対応をすることができます。

不完全履行の具体例

約束をきちんと果たさないことを不完全履行と言いますが、これは様々な場面で起こりえます。
例えば、商品の売買では、買った人が望んだ数量よりも少ない商品が届いたり、壊れた商品が混ざっていたりするケースが考えられます。数量や品質は契約で決められた大切な要素なので、これらが満たされていないと不完全履行となります。注文した商品が100個なのに80個しか届かなかったり、傷がないと約束されていたのに傷だらけの商品が届いた場合などがこれに当たります。
建物を建てる契約でも同様です。設計図と違う材料が使われていたり、工事が雑であったりするケースも不完全履行です。設計図は建物の完成形を示す重要な書類であり、使われる材料や工事の方法は、建物の安全性や耐久性に直結します。例えば、耐火性の高い材料を使うと約束していたのに、実際には安価な耐火性のない材料が使われていた場合、これは重大な不完全履行です。
また、サービスの提供でも不完全履行は起こります。契約で約束したサービスの質が満たされていない場合です。サービスの内容や質は契約によって担保されるべきものです。例えば、月に一度の定期点検を約束していたのに、二ヶ月に一度しか点検に来なかった場合や、プロの掃除サービスを依頼したのに、掃除が不十分で汚れが残っていた場合などは、不完全履行にあたります。
このように、契約内容と実際にやったことが違う場合は、不完全履行となる可能性があります。契約の当事者は、契約内容をはっきりさせておくことと、きちんと履行されているかを確認することが大切です。そうすることで、後々のトラブルを防ぐことができます。
| 場面 | 不完全履行の例 | 契約内容 | 重要性 |
|---|---|---|---|
| 商品の売買 |
|
数量、品質 | 契約で決められた大切な要素 |
| 建物の建築 |
|
設計図、材料、工事の方法 | 建物の完成形を示す重要な書類。安全性や耐久性に直結 |
| サービスの提供 |
|
サービスの内容、質 | 契約によって担保されるべきもの |
債権者の権利と対応策

お金を貸した側が返してもらえない、あるいは商品を売ったのに代金を払ってもらえないといった問題は、しばしば発生します。このような状況に直面した時、お金を貸した側や商品を売った側、つまり「債権者」には、いくつかの手段があります。
まず、相手方が約束をきちんと守っていない、つまり「不完全履行」の場合、債権者は提供されたものを受け取らない権利があります。例えば、注文した商品が傷ついていたり、数が足りなかったりする場合、その商品を受け取らず、正しい商品を送るように求めることができます。
次に、不完全履行によって損害が生じた場合、債権者はその損害を賠償するように求めることができます。例えば、納期に遅れたせいで別の取引に支障が出た場合、その損失を賠償してもらうことができます。損害賠償の額は、不完全履行によって実際に発生した損害額となります。
さらに、不完全履行が重大な場合、債権者は契約そのものを取り消すことができます。例えば、何度も納期が遅れたり、商品の欠陥が重大な場合、契約を解除し、それまでの取引をなかったものとすることができます。ただし、どの程度で「重大」と判断されるかは、個々の状況によって異なります。
債権者がどのような手段を選ぶかは、不完全履行の内容や程度、契約の内容などを総合的に判断して決める必要があります。軽微な不完全履行であれば、再度履行を求めるだけで十分かもしれません。しかし、重大な不完全履行であれば、契約を解除し、損害賠償を求める必要があるでしょう。いずれの場合も、冷静に状況を判断し、適切な対応をすることが重要です。専門家、例えば弁護士などに相談することも有効な手段の一つと言えるでしょう。

完全履行の請求

約束をきちんと果たしてもらう権利、これを専門的には「完全履行の請求」と言います。お金を貸したのに一部しか返ってこない、注文した品物が足りない、工事を頼んだのに一部が未完成…こんな時、相手方にきちんと約束通りに履行してもらうよう求めることができるのです。
例えば、りんごを100個注文したのに80個しか届かなかったとしましょう。この場合、足りない20個を届けるよう請求できます。これが完全履行の請求です。また、家を建てる契約をして、完成したものの壁にひび割れが見つかった場合、ひび割れを直してもらうよう求めることもできます。
ただし、何でもかんでも完全履行を請求できるわけではありません。どうしても完全な履行が不可能な場合、例えば、注文していた一点物の絵画が火事で焼失してしまった場合などは、完全履行を求めることはできません。また、完全履行にあまりにも大きな費用がかかる場合も認められません。例えば、小さな傷を直すために、家全体を建て直す必要があるような場合は、費用と効果が見合わないため、完全履行の請求は難しいでしょう。
さらに、債務者の事情も考慮されます。例えば、品物が不足していたのは、債務者ではなく運送会社のミスだった場合、債務者に過失がないと判断されれば、完全履行の請求は認められない可能性があります。
もし完全履行の請求が認められない場合は、他の方法で解決を目指すことになります。損害賠償を請求する、つまりお金で損失を埋めてもらうことが一般的です。不足していた分の商品の代金や、ひび割れ修理にかかる費用などを請求できます。状況に応じて適切な方法を選択することが大切です。

損害賠償請求

約束がちゃんと守られなかったせいで損をした時、損をした人は約束を破った相手に損害をきちんと払ってもらうよう求めることができます。この、損害を賠償してもらう権利は法律で認められています。一体、どれくらいのお金を払ってもらえるのかというと、約束が守られなかったことで実際にどれだけの損をしたのかによって決まります。
例えば、注文していた品物が不良品だったとします。この不良品のために、お店に対するお客さんの信頼が薄れてしまい、お店の売り上げが落ちてしまったとしましょう。このような場合、売り上げが落ちてしまった分のお金を損害として請求することができます。これは、不良品という約束違反によって実際に発生した損害だからです。
ただし、何でもかんでも請求できるわけではありません。約束を破ったことが原因で損害が発生したことを、きちんと説明して証明しなければなりません。誰が見ても納得できるように、はっきりと説明する必要があります。さらに、損害が発生する可能性について、あらかじめ予想できた範囲でしか請求できません。
たとえば、本来届くはずだった商品が不良品で納入されなかったため、その商品を材料として使う予定だった工場の操業が停止してしまったとします。この場合、納入業者は、商品の納入が遅れたことで工場が止まってしまう可能性をあらかじめ予想できたと考えられます。したがって、工場の操業停止による損害を賠償する責任が生じるでしょう。
しかし、工場の所有者の親戚が経営する別の会社が倒産しそうになり、工場の所有者がその会社を助けるために工場を売却せざるを得なくなったとします。この場合、納入業者は、商品納入の遅延が工場の売却につながることを予見することは不可能です。したがって、工場売却による損害を賠償する責任は負わないでしょう。このように、損害賠償が認められるかどうかは、損害と契約違反との間の因果関係、そして損害の予見可能性によって判断されます。

契約解除

約束がちゃんと守られないことを不完全履行と言います。例えば、商品を注文したのに届かない、あるいは届いた商品が壊れていた、といった場合です。この不完全履行が重大なものである場合、つまり、約束が守られないことで相手に大きな損害を与えた場合には、契約を解除することができます。
契約解除とは、最初から契約が無かったものとみなすことです。契約が解除されると、当事者は契約に基づく義務から解放されます。例えば、商品の代金を支払う義務や、商品を引き渡す義務などから解放されます。
ただし、何でもかんでも契約を解除できるわけではありません。不完全履行が軽微な場合、例えば、商品に小さな傷があった程度では、契約を解除することはできません。また、債務者が履行を催告されたにもかかわらず履行しない場合、つまり、相手に「約束を守ってください」と伝えたにもかかわらず、相手が約束を守らない場合にのみ、契約解除が認められます。催告なしにいきなり契約解除することはできません。
契約解除を行う際には、相手方に解除の意思表示をする必要があります。「契約を解除します」という意思を明確に伝える必要があるのです。口頭で伝えることもできますし、書面で伝えることもできます。意思表示の方法に特別な決まりはありませんが、後々のトラブルを避けるためにも、書面で意思表示を行い、証拠を残しておくことが望ましいでしょう。内容証明郵便を利用すれば、相手に確実に意思表示が到達したことを証明できますし、解除の意思表示をした日付も明確になります。
契約解除は、自分を守るための大切な権利です。しかし、安易に解除を行うと、かえって自分に不利な結果となる可能性もあります。契約解除について疑問がある場合は、法律の専門家に相談することをお勧めします。

