不可分債権:知っておきたい基礎知識

調査や法律を知りたい
『不可分債権』ってよくわからないんですけど、先生教えてください。

調査・法律研究家
簡単に言うと、複数の人が共同で一つのものを受け取る権利のことだよ。例えば、みんなで共同購入した絵画なんかが例として挙げられるね。

調査や法律を知りたい
なるほど。つまり、みんなで一緒に絵を買った場合、その絵を受け取る権利はみんなで持っているということですね。でも、それぞれの人が絵の全部を受け取れる権利を持っているんですよね?

調査・法律研究家
その通り!それぞれの人が絵の全部を請求できる権利を持っているよ。誰かが代表して絵を受け取っても、他の人の権利はなくなるわけではないけれど、債権者全員の利益になるようにしなければならないね。ただし、絵の代金を払う義務などは、それぞれの取り決めによって別々に扱われるんだよ。
不可分債権とは。
『分けられない債権』(分けられない債権とは、複数の債権者が、同じで分けられないものを受け取ることを目的とした債権のことです。それぞれの債権者は、債務者に対して全てのものを請求することができ、一人で全てを受け取ることができます。ただし、その他の点ではそれぞれの債権は別々のものとして扱われます。)について
不可分債権とは

複数の債権者が、同じ目的の支払いを受ける権利を共有している場合、「不可分債権」と呼ばれます。これは、まるで一つの糸で繋がれた凧のように、複数の債権者が一つの権利を共同で所有している状態です。例えば、兄弟姉妹で共同所有している土地を売却したと想像してみてください。この売却によって得られるお金は、土地という一つのものから発生する一つの利益であり、兄弟姉妹それぞれが全額を受け取る権利を有する不可分債権となります。
物理的に分割できるものに関しても、共有者全員が共同で利用する契約を結んでいれば、その利用に関する権利は不可分なものとなります。例えば、複数人で共同利用する車の契約を結んだとします。この場合、車自体は分割できるものですが、利用に関する権利は不可分債権となり、各共有者は車全体の利用を請求できます。誰かが勝手に一部だけを使う、といったことはできません。つまり、物が分けられるかではなく、権利の性質によって不可分債権となるかが決まるのです。
不可分債権の重要な特徴は、各債権者が債権の全体を行使できる点です。先ほどの土地の例で言えば、兄弟姉妹それぞれが売却代金の全額を請求する権利を持ちます。一部だけを請求することは認められません。また、債務者も債権者の一人に対して全額を支払えば、他の債権者に対する支払い義務からも解放されます。これは、債務者にとって大きなメリットと言えるでしょう。誰に支払いをすればよいか迷う必要がなく、一人に支払えば全ての債務が消滅するからです。このように、不可分債権は債権者と債務者の双方にとって、権利関係を明確にする重要な役割を果たしています。
| 債権の種類 | 説明 | 例 | 債権者の権利 | 債務者の義務 |
|---|---|---|---|---|
| 不可分債権 | 複数の債権者が、同じ目的の支払いを受ける権利を共有している状態。権利の性質によって不可分となる。 |
|
各債権者は債権の全体を行使できる(全額請求権)。 | 債権者の一人に全額支払えば、他の債権者への義務も消滅。 |
分割可能な債権との違い

分割できる債権と分割できない債権の違いは、その名の通り、債権を分けて請求できるかどうかという点にあります。分割できる債権とは、債権の内容をいくつかに分けて請求できる債権のことです。たとえば、ある人が別の人に百万円を貸したとしましょう。この場合、貸した人は借りた人に対し、百万円全額ではなく、五十万円だけ請求することも、百万円全額を請求することもできます。このように、分割して請求できる債権を、分割できる債権といいます。
一方、分割できない債権とは、分割して請求することができない債権のことです。たとえば、共有の自動車を共同で使う権利を考えてみましょう。この権利は、自動車全体を使う権利としてのみ行使できます。つまり、自動車の半分だけを使う、といった部分的な行使はできません。このように、全体としてのみ行使できる債権を、分割できない債権といいます。
分割できる債権の場合、それぞれの債権者は自分の持分に応じて請求できます。例えば、三人が共同で別の人に百万円を貸した場合、各人は自分の貸した額に応じて、たとえば三十万円や四十万円といった具合に、それぞれ請求できます。
しかし、分割できない債権の場合、債権者全員が一つの権利を共有しているため、それぞれの債権者は債権全体を行使できます。つまり、百万円の債権であれば、各債権者は百万円全額の請求ができます。ただし、受け取ったお金は債権者間で分配する必要があります。
債権が分割できるかできないかは、債権の目的物の性質、当事者の意思表示、法律の規定などによって決まります。たとえば、金銭の貸し借りは通常、分割できる債権となりますが、絵画のような一個の物を売買する場合は、分割できない債権となります。また、当事者が分割できないという約束をしていれば、たとえ金銭の貸し借りであっても、分割できない債権となります。
| 項目 | 分割できる債権 | 分割できない債権 |
|---|---|---|
| 定義 | 債権の内容をいくつかに分けて請求できる債権 | 分割して請求することができない債権 |
| 例 | 100万円の貸付(50万円だけ請求することも、100万円全額請求することも可能) | 共有自動車の使用権(自動車全体を使う権利としてのみ行使可能) |
| 複数債権者の場合 | 各債権者は自分の持分に応じて請求できる(例:3人が100万円を貸した場合、各人は自分の貸した額に応じて請求) | 債権者全員が一つの権利を共有するため、各債権者は債権全体を行使できる(ただし、受け取ったお金は債権者間で分配が必要) |
| 分割可否の決定要因 | 債権の目的物の性質、当事者の意思表示、法律の規定など | 債権の目的物の性質、当事者の意思表示、法律の規定など |
| 具体例 | 金銭の貸し借り | 絵画の売買 |
弁済と債務消滅

分けられない債務、つまりみんなで一緒に持つ権利のことを、不可分債権といいます。たとえば、土地をみんなで所有していて、それを売ったお金を受け取る権利などは、この不可分債権にあたります。この不可分債権には、ふつうの債権とは少し違う、特別なルールがあります。
誰かが借金を返さなければならないとき、債務者は債権者全員にお金を返さなければなりませんが、不可分債権の場合は、債権者の中のたった一人に全額を返せば、他の債権者にも返したのと同じことになるのです。なぜこんなことが起きるのでしょうか。それは、不可分債権の目的物、つまりお金を受け取る権利そのものが、分割できないものだからです。みんなで所有している土地を売ったお金は、一つのかたまりで、それを誰かが全部受け取ってしまった場合、他の人は受け取るものがない、というわけなのです。
具体的な例を挙げてみましょう。みんなで持っている土地を売って、お金を受け取る権利があるとします。この権利は不可分債権です。もし、債務者が債権者の中の一人に、売却代金全額を支払ってしまったら、残りの債権者たちは、もう債務者にお金を請求することができなくなります。お金はもう、ないからです。
しかし、全額を受け取った債権者は、何もせずに済むわけではありません。その債権者は、他の債権者に対して、それぞれの持ち分に応じて、お金を分け与える義務があります。たとえば、土地を3人で所有していて、Aさんが全額を受け取ったとします。もしAさん、Bさん、Cさんの持ち分がそれぞれ3分の1ずつであれば、AさんはBさんとCさんに、それぞれ売却代金の3分の1ずつを渡さなければなりません。
また、債権者の一人が債務者からお金を受け取ったとき、他の債権者は、お金を受け取った債権者に対して、自分の持ち分に応じて分配を請求できます。BさんとCさんは、Aさんに対して「私たちの分のお金もください」と請求できるのです。このように、不可分債権における弁済と債務消滅には、ふつうの債権とは違う、特別な決まりがあることを覚えておきましょう。
不可分債権の具体例

分けられない債権、つまり不可分債権とは、複数の債権者が共同で、あるいは複数の債務者が連帯して、ひとつのものを請求または支払う権利義務のことです。いくつかの具体例を見ながら、その特徴を詳しく見ていきましょう。
まず、共有で持っているものを売ったお金の請求権を考えてみましょう。例えば、兄弟で土地を共同で所有していて、それを売却した場合、売却代金は兄弟それぞれが請求できます。このとき、それぞれの兄弟は、売却代金全体について請求する権利を持っているのです。つまり、兄が全額を請求することも、弟が全額を請求することも可能です。これが不可分債権です。なぜなら、売却代金請求権は分割することができず、全体として扱われるからです。
次に、相続の場面を考えてみましょう。遺産分割の請求権も不可分債権です。例えば、両親が亡くなり、兄弟が相続人となった場合、それぞれの兄弟は、遺産全体について分割を請求する権利を持ちます。兄だけが特定の財産について請求する権利を持つのではなく、すべての相続人がすべての遺産について分割請求権を持つのです。これも、遺産分割請求権が分割できない性質を持つからです。
さらに、複数の人々が共同で悪いことをしてしまい、損害を与えてしまった場合の賠償請求権も不可分債権です。例えば、複数人で物を壊してしまった場合、被害者はそれぞれの加害者に対して、損害賠償全体を請求できます。つまり、Aさんが全額を請求することも、Bさんが全額を請求することも、Cさんが全額を請求することも可能です。これは、被害者が受けた損害は一つであり、分割することができないからです。
このように、共有物の売却、相続、共同不法行為といった場面以外にも、当事者間の契約や法律によって不可分債権が生まれることがあります。重要なのは、債権の目的物が分割できない、あるいは分割することが適切ではないと判断されるかどうかです。もし分割することが難しい、あるいは分割によって価値が損なわれるような場合、それは不可分債権として扱われることになります。
| 場面 | 説明 | 債権の特徴 |
|---|---|---|
| 共有物の売却 | 兄弟で土地を共同所有し売却した場合、それぞれの兄弟は売却代金全体について請求する権利を持つ。 | 売却代金請求権は分割できず、全体として扱われる。 |
| 相続 | 両親が亡くなり兄弟が相続人となった場合、それぞれの兄弟は遺産全体について分割を請求する権利を持つ。 | 遺産分割請求権は分割できない性質を持つ。 |
| 共同不法行為 | 複数人で物を壊した場合、被害者はそれぞれの加害者に対して損害賠償全体を請求できる。 | 被害者が受けた損害は一つであり、分割することができない。 |
まとめ

分けられない債権について説明します。これは、複数の貸し主が同じ目的の、分割できない返済を求める権利のことです。
例えば、共同で絵画を所有している複数人が、その絵画を売却して得られるお金を共同で請求する場合を考えてみましょう。この場合、お金という返済は分割できないものなので、分けられない債権となります。それぞれの貸し主は、絵画の買い主に対して、売却金額の全額を請求できます。そして、買い主は、そのうちの誰かに全額を支払えば、自分の義務を果たしたことになります。
しかし、お金を受け取った貸し主は、他の貸し主に対して、それぞれの持ち分に応じて分配する義務があります。例えば、AさんとBさんが共同で絵画を所有し、Aさんの持ち分が6割、Bさんの持ち分が4割だとします。この絵画が100万円で売却された場合、Aさんは買い主から100万円全額を受け取ることができます。しかし、Aさんはその後、Bさんに40万円を渡す義務があります。このように、分けられない債権では、債権者間で内々に清算する必要があるのです。
一方、分割できる債権の場合、それぞれの貸し主は、自分の持ち分だけを請求します。例えば、AさんとBさんが別々に土地を所有し、それぞれ別の買い主に売却する場合、AさんとBさんはそれぞれの土地の売却代金だけを請求すればよいのです。
分けられない債権は、共有物や共同相続、共同不法行為など、様々な場面で発生する可能性があります。共同で事業を行う場合や、共同で保証人になる場合なども、分けられない債権が発生することがあります。このように、分けられない債権は私たちの生活の中で意外と身近なものです。
分けられない債権と分割できる債権では、請求の方法や弁済の方法が大きく異なるため、それぞれの特徴を正しく理解しておくことが重要です。もし、分けられない債権について疑問があれば、法律の専門家に相談することをお勧めします。専門家の助言を受けることで、トラブルを未然に防ぎ、より適切な対応をすることができるでしょう。
| 項目 | 分けられない債権 | 分割できる債権 |
|---|---|---|
| 定義 | 複数の貸し主が同じ目的の、分割できない返済を求める権利 | それぞれの貸し主が自分の持ち分だけを請求する権利 |
| 返済対象 | 分割できないもの(例:絵画売却代金) | 分割できるもの(例:それぞれの土地の売却代金) |
| 請求方法 | 各債権者は全額を請求可能 | 各債権者は自分の持ち分のみ請求 |
| 弁済方法 | 債務者は誰かに全額を支払えば義務完了。受領者は他の債権者に分配義務あり。 | 各債権者に対して、それぞれの持ち分を支払う |
| 発生例 | 共有物、共同相続、共同不法行為、共同事業、共同保証人など | 別々の土地の売却など |
